知ってる?インフォームド・アセントとは

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「インフォームド・アセント」という言葉をご存知ですか?

インフォームド・コンセント(IC)とよく似たこの言葉は、小児科や精神科など“患者さんの理解力や判断力が低い分野”ではとても重要な概念です。

今回は、そんなインフォームド・アセントについての概要を整理していくので、是非理解していってください!

インフォームド・アセントとは

インフォームド・アセントとは、治療に関する説明と同意に関する過程で、患者さんが治療の内容を理解できない場合や、判断できない場合などにおける臨床的な対応に関わる概念です。

それを理解する前提として、まずは類似した概念であるインフォームド・コンセントについての定義を紹介したいと思います。

インフォームド・コンセントのおさらい

インフォームドコンセントとは(以下引用)

インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。

インフォームドコンセントは、ただ単に病状を告げ、同意書をとることではない。日常の場面においても、患者と医療職は十分に話し合って、どのようなケアを行うか決定する必要がある。

(日本看護協会HP インフォームドコンセントと倫理)

この内容によると、インフォームド・コンセントは「病状や治療について十分に理解」「医療を選択」「皆で合意」というプロセスを踏むことを指します。

ただし、前提とする条件として患者さんの同意能力があることが必要になります。

つまり、小児や精神の領域に関する患者さんに対しては、その同意能力そのものをアセスメントした上で「判断することが出来るか」を見極める必要があります。

インフォームド・アセントとインフォームド・コンセントの違い

インフォームドコンセントでは、前提条件として患者さんの同意能力があることが必要と説明しました。

対して、インフォームド・アセントは患者さんが

  • 説明を理解できない
  • 同意する判断ができない
  • 同意や拒否を表出できない

場合に、保護者や医療者が治療への判断を行い、患者さんに同意してもらう過程で起こる了解や黙諾を指します。

対象となるのは、インフォームド・コンセントを行う上で必要な同意能力が足りていない患者さん、あるいは法律上の対象年齢になっていない患者さんです。

まとめると、インフォームド・アセントは病気や治療に関して説明しても明確な同意を得られない場合(基準一定ではありませんが)に発生するプロセスのことです。

その場合は、説明に対する了解や黙諾が得られたとして進めます。ただし、よりわかりやすい説明を行った上で判断する必要があります。

現在ではガイドラインによって“反対がみられない状態”“積極的同意がある状態”など、定義に差があり、一貫した定義づけがしにくい概念です。

黙諾も含むということで「Noではないかなぁ」という状態で治療を行うこともあるのが現状です。(その場合は法的に同意できる立場の方の同意を得ています。)

注意点として、いずれの場合も患者さんの利益のために配慮することが必要です。

医療者からの一方的な治療は患者さんには不適切な方法になり得ます。

インフォームド・アセントのプロセス

インフォームド・アセントは4つの要素で構成されているとされています。

わかりやすくまとめると、

知る→わかる→考える→伝える

といった感じかと考えています。

ちょっと難しいけれど正確な表現でいうと、

  • 理解:医療者から提供される疾患や予後、治療に関する情報を適切に理解する
  • 認識:自分の病気について理解して、その治療を選択した場合に起こりうる結果に関する情報を理解できる
  • 論理的思考:メリットとデメリットについて論理的に思考する
  • 選択の表明:自身で導いた自分の決断・選択を他者に表出する能力

という分類です。

これらの4つの要素がそろってようやく、治療への合意が成り立つのです。

一応アセント能力を測定する尺度の原文も読んできました(笑)

ちなみに統合失調症の患者さんで作成した尺度なので、MRなどの患者さんにどう適用するかは慎重な対応が必要そうです。

これらを踏まえたうえで、インフォームド・アセントを行うために4つのうちのどこに課題があるのかを見極めたうえで患者さんに合わせた手段で説明することが必要になるのです。

ちなみに、治療への理解が十分でない場合は、患者さんが退院したいと訴えることもあります。

精神科で患者さんが退院したいと言ったときの対処は下の記事で学習してみてください。

精神科で患者さんが退院したいと言ったら…
精神科に関わらず、患者さんは退院したいという思いを看護師に伝えてくることがあります。 診療科では治療の経過が目に見えるので、患者さん自身が治療状況を把握しやすいのですが、精神科では患者さんの意向を反映させると患者さんの不利益に繋がってしまう...

看護師にとって患者さんの想いをくみ取るのはとても重要な役割です。

目の前にいる患者さんの理解や判断の能力が足りない場合、特に4つの領域のどこが困難なのか整理し、アセスメントに役立てください。

まとめ

今日のまとめはこちら!

患者さんの権利を尊重し、より良い医療を提供できるよう心がけていけるといいですね。

今回紹介したインフォームド・アセントはまだまだエビデンスも少ない概念となるので、今後もっと普及して臨床研究が活発になると素敵です。

小児科や精神科では、患者さんは自身の疾患について理解することが難しい場合があります。

Nur-switchでは他にも役立つ資格や知識について紹介しています。

是非ご覧ください!

最後まで読んでくださってありがとうございます!

それではまた!

こちらもおすすめ

参考資料

児童・青年期精神疾患の薬物治療ガイドライン

日本看護協会HP インフォームドコンセントと倫理

https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/rinri/text/basic/problem/informed.html 21/04/24閲覧)

The MacCAT-T: a clinical tool to assess patients’ capacities to make treatment decisions(T Grissoら 1997)

看護師S田さん

エビデンス中毒、いわゆる「エビ厨」を自称する京大出身の生意気な看護師。
「根拠に基づく看護(EBN)」の普及のためにNur-switchを設立し、論文レビュー記事から雑記ブログまで幅広く執筆。
臨床に立ちながら精力的に記事を更新中!

ac

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