わがままと疾病利得

精神科に限らず患者さんが“病気を言い訳にしたわがまま”を言ってきた場合、看護師・家族などの言われた人は対応に困ることが多いです。

病気によって患者さんが得をすることは疾病利得と呼ばれ、その中でもいくつか種類があります。

精神科ではパーソナリティ障害や依存症の場合に、この疾病利得の扱いがとても難しくなるため、今回はみなさんのお悩みを少しでも解決できればと思います!

疾病利得とは

病気によって患者さんが得をするという疾病利得はフロイトによって定義されたものです。定義については下のようになります(以下引用)。

疾病利得 (gain from illness)

 精神的ないし身体症状の出現によって患者にもたらされる心理的利益をいいます。

疾病利得の種類

一次的利得

 おもに患者の内的な満足に関係します。症状の発現や維持によって何らかの不安や葛藤から解放されたり、欲求が満たされる側面をもちます。

二次的利得

 主として外的、現実的利益であり、症状出現後に二次的に獲得されるものです。
 たとえば、対人関係上の実際的利益がこれに当たります。その症状、その症状が生じているために、周囲の人たちの同情や温かな世話を受けることが二次的利得の例です。これは症状を用いて他者に影響を与えたり、他者を操作していることになります。ただし、意識的、意図的に演じられる詐病とは区別されます。
 賠償神経症にも、二次的疾病利得が作用していると考えられます。賠償神経症とは、災害等により心身に受けた損傷に対する賠償や補償をより多く、より長く得たいという願望が動機となる神経症をさします。

(引用元:臨床心理学用語辞典)

なかなか堅い文章ではありますが、簡単に表現すると

一次疾病利得はマイナス→±0
二次疾病利得は±0→プラス

というイメージでいいかと思います。

(というのも、精神科領域でこのような表現を厳密に区別するのが難しいのと、一次と二次の厳密な境界を分けることの臨床的意義は少ないので、イメージ程度での区別で十分かと思います。)

自分の不利益から自分を守るためのものと、自分の利益を得るためのものとでざっくりと分けて考えると、少し楽に区別できるかと思います!

(これは根拠に基づいて僕なりに臨床経験を当てた私見です)

今回の記事でメインに扱うのは、看護師が臨床で出会う疾病利得としての二次疾病利得です。

ここから、二次疾病利得までの背景と対処法について分けて整理していきましょう。

悪い言い方にはなりますが「患者さんは病気を言い訳に様々な要求をしてくる場合がある」ということです。

これは看護師に対してだけではなく、家族に対しても向けられるため、家族関係でも摩擦が生まれます。

どうして疾病利得が生まれるの?

「ねえ、チョコ買ってくれなかったら、今から手首を切るよ?」

と家族などの身近な人に言われたら、みなさんならどうしますか?

たぶん、僕の答えも・・・買います。

では、それが繰り返されたら、いくつまでチョコを買いますか?

その質問がエスカレートしていくと・・・

「10万くれなかったら、首吊るから。」

と言われたら、みなさんならどうしますか?

自分の身近な人に置き換えて想像してみてください。

これが、疾病利得の生まれる背景です。

このような主張をしている本人たちは、悪い意味での“成功体験”を積み重ねていき、次第に巧みに、大きな要求をするようになります。

巻き込まれて、提示される側も、かなりのストレスを伴って、悩み、苦しむことは容易に想像できます。

では、どのようにして対処するのがよいでしょうか。

いくつか例を考えながらここから整理していきたいと思います。

疾病利得への対処方法3選

ここからは疾病利得に関わる要求に対しての対応として、僕が臨床において経験し、実践している対応を3つ紹介していきたいと思います。

  1. 要求を明確に把握する
  2. 線引きをする。
  3. 優先順位を明確にする。

(これは現段階では私見です。エビデンスを収集しつつ、詳細をブラッシュアップしていくので、今後引き続き更新していきます!)

  1. 要求を明確に把握する

患者さが二次疾病利得をかざしてきているのでは?と感じたら、まずは患者さんの要求を客観的に把握しましょう。

「倒れ込むことで、見てもらっている安心感を得たいのかな」「ODのほのめかしによって、自分のルール逸脱を正当化しようとしているのかなあ」「リストカットと引き換えにブランド品が欲しいのかな」など、要求は患者さんのケースによって様々です。

患者さんはなにを条件として提示して、なにを求めているのか、それをきちんと把握することがまずは大切になります。

  1. 線引きをする。

看護の実践において徹底しているのは、患者さんに対して、「出来ること・出来ないこと」を明確に提示して線引きをすることです。

明確な線引きによって要求のエスカレートを防ぎつつ、出来ることを提示してあげるという支持的な姿勢を示すことが出来ます。

  1. 優先順位を明確にする。

患者さんの要求が多様になるにつれて、看護師自身が「何が正解かわからない」「自分が正しいのかわからない」という感覚に悩むことがあります。

そのような場合に、患者さんにとって必要なこと、患者さんの治療に必要なこと、患者さんの安全確保のために譲れないことなど、項目に分けながら優先順位を整理することで、看護師として何が正しいのかを検討してみましょう。

この段階で判断に困ったら、他のスタッフの意見も聞いてみましょう!

(病院の種類は主治医の方針によっても対応が異なるため、この記事ではそのヒント程度のガイドに留まってしまいますが、参考になればと思います)

疾病利得での対応で大事になるのは、患者さんの要求の全部を否定しないことです。

対応出来る範囲では患者さんの要求を受け入れていくことで、患者―看護師関係の構築にも役立ちます。患者さんにとっても逃げ道を用意してあげるという姿勢が重要です。

まとめ

疾病利得については、実は精神科領域に限らず、身体科でも患者という立場に甘えている方にはよく見られる内容です。

また、看護師としては対処に困り、頭を抱えるようなストレスの原因になっていることも多いです。

疾病利得については、僕が解説したイメージのように、「マイナス→0」なのか「0→プラス」なのかなど、自分なりのイメージを持っていただければと思います!

みなさんの案があれば、是非コメントでお待ちしています!

それではまた次の記事で!

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参考文献

臨床心理学用語辞典 http://rinnsyou.com

看護師S田さん
看護師S田さん

京都大学卒業後、とある病院で看護師として勤務しながら、看護師の知識向上のため、「ナースイッチ」を創設。日々臨床と研究を両立しながら看護に向き合っています。

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