心の治療における“家族”

精神科において、看護のアセスメントから切り離せないのが家族の存在です。

これは、精神症状の回復と悪化に関わっているという点で、身体科以上に配慮して情報収集しなければいけません。

そこで今回は、精神科領域における家族の役割と位置づけを整理することで、みなさんの患者へのアセスメントやケアに役立てられるような内容をお届けしていきたいと思います!

精神科における家族とは

精神科のアセスメントでは、家族関係の把握は当然のように行われています。

看護師は家族について情報収集を行い、看護計画に反映させることで患者さんに合わせたケアを提供しています。

厚生労働省の資料によると精神科における家族の位置づけにいて、

精神科医療における保護者(主に家族等)の位置付け 《現行規定》 
・治療を受けさせる義務(22条1項) 保護者は、精神障害者(第二十二条の四第二項に規定する任意入院者及び病院又は診療所に入院しないで行われる精神障害の医療を継続して受けている者を除く。以下この項及び第三項において同じ。)に治療を受けさせ、及び精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。 ・医師に協力する義務(22条2項) 保護者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。 ・医師の指示に従う義務(22条3項) 保護者は、精神障害者に医療を受けさせるに当たつては、医師の指示に従わなければならない。 

とあります。

つまり、正式な定義によると家族は治療に対して前向きであることが義務として定められています。

しかし精神科では一筋縄ではいかないのが現実で、そこには身体科とは異なる精神科ならではの特徴があります。

【身体疾患と精神疾患における家族の位置づけ】

身体の治療は疾患の発症と進行に家族が関与しておらず、病気が「敵」として明確なので“癌を取る”“折れた骨がくっつくまで固定する”など、協力体制が整えやすいものです。

しかし、心の治療は疾患の発症、治療に家族との相互作業が関与しているので家族の協力が必ずしも治療にとってプラスに働くとは限らないのです。

特に内因性の疾患であれば家族の協力が有効に得られる可能性がありますが、心因性の疾患であれば環境要因・家族関係・衝撃的事案による発症が大いに関与しているので、家族かの理解や環境調整が得なければ、疾患の治療が出来ても再発リスクが高い状態が維持されると考えられます。

(すこし難しい言い回しになってしまいましたが、この後解説していきます!)

病気に関わる家族とは

遺伝素因

統合失調症やうつ病など、いくつかの精神疾患について、遺伝的な要因があるとされています。そのため家族歴に関しては情報として収集されています。

家庭環境としての家族

適応障害などの患者さんにとっては“適応”の対象となる社会環境の最小単位が家族であるため、患者さんのどの点が“適応”していないのか、

疾患の発症への影響

虐待などによってPTSDを発症してしまった場合、家族は疾患の発症の要因であり、家族との接触を避けて患者を保護する必要があります。

その上で、例えば男性からの性的虐待の既往がある場合や、母親からの虐待の場合など、それらの原因を想起してしまうものを避ける必要があれば、病院でも男性看護師を避けて対応するなどの措置がとられます。

これらのように、患者さんにとって家族そのものが精神疾患に直結するような場合は、家族への情報収集や介入が必要となります。

生活の場としての家族とは

精神科では患者さんは自宅、グループホーム、シェルターに準ずる保護施設など様々な退院先がありますが、自宅に退院し家族と生活する場合は退院先として家族を考慮した看護が必要となります。

ここで家族に求められる重要な役割として、療養環境としての家と、早期発見のための眼があります。

療養環境に関しては、「良いものは与え、悪いものは取り除く」という役割が必要ではないかと思います。

例を挙げると、

・家族は服薬管理を出来るかなど、治療に関わる点

・依存症治療においては家族が依存しているものに介入できるか

などが重要な情報となります。

依存症などの場合に、それでも患者さんに対象のものを与えてしまう家族のことをイネイブラーと表現します。アルコール依存症で、お酒の我慢に苦しむ家族を見たくないから、甘やかしに近い形で与えてしまうのです。

ここで注意する必要があるのが、家族に悪気がないケースが多いことです。

早期発見に関しては、再受診や再入院のきっかけとなるのは、身近な人が気付く「なんかおかしい」という異変が多いため、家族の気づきが重要となるからです。

例えば、抗うつ薬を飲んでいる患者さんのテンションが高い、摂食障害の患者さんの食欲が異常多くなった、などの些細な気づきが、疾患の早期発見・早期治療につながるのです。

このように、自宅退院する患者さんにとっては、生活の場として家族が関わることを念頭において看護的な介入を考えていく必要があります。

まとめ

家族は身近な存在だからこそ、患者さん与える影響も大きく、そのため看護師が配慮するべき着眼点も多いと思います。

この記事を参考にして、「収集している情報は家族のどんな側面なのか」「患者さんにとって現在の家族に必要なポイントはどれか」を整理して看護に生かしていただければと思います。

家族看護の詳細については、今後もそれぞれの疾患別や家庭環境別にまとめていきたいと思うので、今後も是非ご覧ください!!

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引用文献

「退院請求・処遇改善請求について」第6回 保護者制度・入院制度に関する作業チーム 資料1(H23/6/16)

看護師S田さん
看護師S田さん

京都大学卒業後、とある病院で看護師として勤務しながら、看護師の知識向上のため、「ナースイッチ」を創設。日々臨床と研究を両立しながら看護に向き合っています。

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