人生会議とは、もしものときのために、自らが望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。
日本の厚生労働省が推進する取り組みで、2019年にはタレントの小籔さんが人生会議のポスターに起用されましたが、その内容が不謹慎だと議論を呼びました。
身近な人の生死に関わる繊細なキーワードですが、それゆえに元気なうちに話しておくことが重要でもあります。
今回は人生会議を行うメリット、会議の具体的な内容、進め方とポイント、厚生労働省の取り組みをわかりやすく解説します。
人生会議を行うメリット
人生会議を行うことで、以下の3つのメリットが期待できます。
本人の意思が尊重される
本人の意思を尊重することは、本人の権利を守るだけでなく、本人の人生をより良いものにするためにも重要です。具体的には、以下のようなものが考えられます。
- 本人が自らの意思で選択できること
- 本人の希望に沿った医療やケアを受けられること
- 本人の尊厳が守られること
本人の意思が尊重されることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 本人が主体的に人生を送ることができる
- 本人の不安や恐怖を軽減することができる
- 家族や医療・ケアチームの負担を軽減することができる
本人の意思が尊重されなければ、以下の問題が起きる可能性があります。
- 本人が望まない医療やケアを受けることにつながる
- 本人の尊厳が損なわれる
- 家族や医療・ケアチームの負担が増える
例えば、認知症などで判断能力が低下している場合には、本人の意思を尊重することは難しいです。
しかし、本人の意思を尊重するためには、本人の価値観や信念をよく理解し、本人に寄り添った意思決定支援を行うことが大切です。
具体的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 延命治療や人工透析など、医療やケアに関する希望を尊重する
- 自宅で療養したいか、施設で療養したいかなどの希望を尊重する
- 財産や介護に関する意思を尊重する
また、本人の意思を尊重するためには、本人の意思が明確に伝わるよう、本人と繰り返し話し合うことも大切です。話し合いの際には、本人の価値観や信念を理解しようと努め、本人の意思を尊重する姿勢を示すことが重要です。
家族や医療・ケアチームの負担が軽減される
「家族や医療・ケアチームの負担が軽減される」とは、本人の意思が明確になっていることで、家族や医療・ケアチームが判断や行動を迷うことがなくなり、負担が軽減されることです。
具体的には、以下のようなものが考えられます。
- 家族は、本人の意思を尊重しながら、最期の看取りを円滑に進めることができる
- 医療・ケアチームは、本人の意思に沿った医療やケアを提供することができる
家族や医療・ケアチームの負担が軽減されることで、以下のメリットが期待できます。
- 家族は、本人の最期を看取ることに集中することができる
- 医療・ケアチームは、より質の高い医療やケアを提供することができる
家族や医療・ケアチームの負担が軽減されなければ、以下の問題が起きる可能性があります。
- 家族は、本人の意思を尊重しながら、最期の看取りを進めることに苦労する
- 医療・ケアチームは、本人の意思に沿った医療やケアを提供することに苦労する
例えば、本人の意思が不明確な場合、家族や医療・ケアチームは、本人の意思を尊重しながら、最期の看取りを進めることに苦労する可能性があります。また、本人の意思に沿わない医療やケアを提供してしまう可能性もあります。
家族や医療・ケアチームの負担を軽減するためには、本人の意思が明確になるよう、人生会議を繰り返し行うことが大切です。話し合いの際には、家族や医療・ケアチームの立場も考慮し、本人の意思を尊重しながら、円滑な意思決定を進めることが重要です。
具体的な事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 本人の意思が明確になっていれば、家族は、本人の希望に沿った最期の看取りを進めることができます。
- 本人の意思が明確になっていれば、医療・ケアチームは、本人の希望に沿った医療やケアを提供することができます。
また、人生会議の際には、家族や医療・ケアチームの立場も考慮し、本人の意思を尊重しながら、円滑な意思決定を進めることが重要です。例えば、家族や医療・ケアチームが負担に感じそうなことがあれば、本人と話し合い、解決策を検討することも大切です。
医療費の抑制につながる
人生会議による医療費の抑制効果については、まだ明確なデータはありません。しかし、以下のことから、一定の抑制効果が期待できると考えられます。
- 本人の意思が明確になることで、不必要な医療やケアの提供が減少する
- 本人の意思を尊重することで、家族や医療・ケアチームの負担が軽減され、より効率的な医療やケアが提供される
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 延命治療や人工透析などの高額な医療の提供が減少する
- 自宅療養や在宅医療などの費用が抑えられる
また、人生会議を行うことで、本人や家族が医療費について意識し、医療費を削減する行動につながる可能性もあります。
例えば、人生会議を通じて、本人や家族が医療費の負担の大きさに気づき、医療費を抑えるため、生活習慣を見直したり、保険の見直しをしたりする可能性があります。
このように、人生会議は、医療費の抑制につながる可能性がある取り組みです。
人生会議の内容
人生会議の内容は、本人の価値観や信念に基づいて自由に決めることができます。具体的には、以下のようなものについて話し合うことができます。
延命治療や人工透析など、医療やケアに関する希望
延命治療や人工透析など、医療やケアに関する希望は、以下のような事態に備えています。
- 重い病気やケガで、生命の危機に瀕している場合
- 老化や病気により、自力で生活することが困難になった場合
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 心肺蘇生や気管内挿管などの積極的延命治療を受けるかどうか
- 人工透析を受けるかどうか
- ホスピスや緩和ケア病棟に入院するかどうか
- 自宅療養や在宅医療を受けるかどうか
延命治療や人工透析などの医療やケアは、生命を延長する効果がある一方で、以下のようなリスクもあります。
- 治療の副作用による苦痛や不快感
- 経済的な負担
- 家族や医療・ケアチームの負担
これらのリスクを踏まえて、本人の意思で、延命治療や人工透析などの医療やケアを受けられるかどうかを決めることが重要です。
また、本人の意思が不明確な場合は、家族や医療・ケアチームが本人の意思を推定して、決定することになります。
人生会議では、本人の意思を明確にするために、以下のようなことを話し合うことができます。
- 本人の価値観や信念
- 人生で大切にしているもの
- 最期を迎えたい姿
人生会議を通じて、本人の意思を明確にすることで、本人の尊厳を守り、家族や医療・ケアチームの負担を軽減することができます。
自宅で療養したいか、施設で療養したいか
自宅で療養したいか、施設で療養したいかを選ぶ際には、以下の判断基準で決定することができます。
- 本人の意思
本人の意思が最も重要です。本人が自宅で療養したいと思っている場合は、自宅で療養できるように支援することが大切です。
- 家族の意思
本人の意思を尊重しつつ、家族の負担も考慮する必要があります。家族が自宅で療養を継続するのが難しい場合は、施設での療養を検討する必要があるでしょう。
- 病状や介護度
病状や介護度が重度の場合は、施設での療養の方が適している場合があります。
- 経済的な状況
施設での療養は、自宅での療養に比べて経済的な負担が大きくなる場合があります。
- 地域の状況
地域によっては、自宅での療養を支援するサービスが充実している場合があります。
これらの判断基準を踏まえて、本人、家族、医療・ケアチームが話し合い、最適な方法を決めることが大切です。
財産や介護に関する意思
財産や介護に関する意思は、以下のような方法で表明しておくとよいでしょう。
- 遺言書
遺言書は、本人の意思を法的に有効に残すことができる最も確実な方法です。遺言書には、財産の分割方法や、介護に関する希望などを記載することができます。
- エンディングノート
エンディングノートは、本人の意思を家族や友人に伝えるためのものです。遺言書よりも簡易なものですが、財産や介護に関する希望を具体的に記載しておくとよいでしょう。
- 財産管理委任契約
財産管理委任契約は、本人が認知症などで判断能力が低下した場合に、第三者に財産を管理してもらうための契約です。財産の分割方法や、介護に関する希望などを記載しておくとよいでしょう。
- 介護サービス利用計画書
介護サービス利用計画書は、介護保険の利用を開始する際に作成する書類です。介護に関する希望を記載しておくと、介護サービスを受ける際に本人の意思が尊重される可能性が高まります。
これらの方法を組み合わせて、本人の意思を明確にしておくことが大切です。
具体的には、以下のようなことを記載しておくとよいでしょう。
- 財産の分割方法
遺産をどのように分割するかを記載します。相続人や、相続財産の具体的な内容などを記載しておくとよいでしょう。
- 介護に関する希望
自宅で療養したいか、施設で療養したいか、介護サービスを受けたいかなどを記載します。介護サービスの種類や、介護サービスの提供者などを具体的に記載しておくとよいでしょう。
- 葬儀に関する希望
葬儀の形式や、葬儀の費用などを記載します。葬儀の費用を誰が負担するかなども記載しておくとよいでしょう。
また、本人の意思を表明する際には、以下の点に注意が必要です。
- 本人の意思を尊重する
家族や友人の意見も参考にしながら、本人の意思を尊重して意思表明することが大切です。
- 具体的に記載する
漠然とした表現ではなく、具体的に記載しておくと、本人の意思がより明確になります。
- 定期的に見直す
本人の状況や価値観は、時間の経過とともに変化する可能性があります。定期的に意思表明を見直し、最新の意思を反映しておくことが大切です。
人生会議の進め方のポイント
以下に、人生会議の進め方のポイントをまとめます。
話し合いの前に、自分自身で考えたいことを整理しておく
話し合いの前に、自分自身で考えたいことを整理しておきましょう。そのためのステップは、以下のとおりです。
ステップ1:自分の価値観や人生観を振り返る
まずは、自分の価値観や人生観を振り返ってみましょう。
- 人生で大切にしていることは?
- どのような生き方をしたい?
- どのような最期を迎えたい?
これらの問いに答えながら、自分の価値観や人生観を整理してみましょう。
ステップ2:医療やケアに関する希望を明確にする
次に、医療やケアに関する希望を明確にしましょう。
- 延命治療や人工透析などの医療やケアを受けたいか?
- 自宅で療養したいか、施設で療養したいか?
- 介護サービスを受けたいか?
これらの希望を具体的に記載しておくと、話し合いの際に役立ちます。
ステップ3:家族や友人と話し合う
家族や友人と話し合うことで、自分の考えを整理し、新たな気づきを得ることができます。
- 自分の価値観や人生観を家族や友人に伝える
- 医療やケアに関する希望を家族や友人に伝える
家族や友人の意見を参考にしながら、自分の考えをより深めていきましょう。
ステップ4:話し合いの準備をする
話し合いの前に、以下の準備をしておきましょう。
- 自分の考えを整理した資料を用意する
- 家族や友人に話し合いの目的や流れを伝える
準備をしておくことにより、話し合いをスムーズに進めることができます。
これらのステップを踏むことで、話し合いで自分の意思をより明確に伝えることができるでしょう。
話し合いは、リラックスした雰囲気で行い、感情的にならないようにする
話し合いをリラックスした雰囲気で行い、感情的にならないようにするためには、以下の準備をしておくとよいでしょう。
話し合いの場所と時間を決める
話し合いの場所は、リラックスできる場所を選びましょう。また、話し合いの時間は、参加者全員がゆとりを持って参加できる時間を選びましょう。
話し合いの目的や流れを決める
話し合いの目的や流れを決めておくことで、話し合いの方向性を定めることができます。また、話し合いの目的や流れを参加者に伝えておくことで、話し合いへの理解を深めることができます。
話し合いのルールを決める
話し合いのルールを決めておくことで、話し合いを円滑に進めることができます。例えば、以下のルールを決めておくとよいでしょう。
- 相手の意見を尊重する
- 感情的にならない
- 話し合いを中断するときは、事前に伝える
話し合いの準備をしておく
自分の考えを整理した資料を用意しておきましょう。また、家族や友人に話し合いの目的や流れを伝えておきましょう。
話し合いで話したいことを考えておきましょう
話し合いで話したいことを考えておきましょう。また、話し合いで伝えたいことを具体的に考えておきましょう。
話し合いの当日は、以下のことに注意しましょう。
ゆとりを持って参加する
話し合いにゆとりを持って参加しましょう。焦っていると、感情的になりやすくなります。
相手の話をよく聞く
相手の話をよく聞きましょう。相手の意見を理解することで、自分の考えをより明確にすることができます。
自分の考えを整理して話す
自分の考えを整理して話しましょう。感情的にならないように、落ち着いて話しましょう。
話し合いを中断するときは、事前に伝える
話し合いを中断するときは、事前に伝えましょう。感情的になって話し合いがうまく進まないときは、休憩を挟みましょう。
これらの準備や注意点を踏むことで、話し合いをリラックスした雰囲気で行い、感情的にならないようにすることができます。
また、会議中に手元に置いておいたら良いものは、具体的に以下のようなものが考えられます。
- 水
- コーヒー
- 紅茶
- ジュース
- ナッツ
- ドライフルーツ
- チョコレート
- クッキー
- 紙
- 筆記用具
- 雑誌
- 本
- 音楽プレイヤー
- スマートフォン
自分に合ったリラックスできるものを用意しておくとよいでしょう。
また、話し合いを中断するときは、事前に伝えるようにしましょう。突然中断されると、相手は戸惑ってしまいます。
話し合いの内容は、記録しておくとよい
話し合いの内容を記録しておくと、後で見直すことができ、また時間の経過による気持ちの変化にも納得できます。後で見直すことが容易になる記録の仕方としては、以下のようなものが挙げられます。
- 要点を簡潔にまとめる
話し合いの内容をすべて記録しようとすると、時間がかかり、後で見直すのが難しくなります。そのため、話し合いの要点を簡潔にまとめるようにしましょう。
- 箇条書きや表を使う
箇条書きや表を使うことで、内容を簡単に把握しやすくなります。また、重要なポイントを強調するために、太字や下線などを活用するのもよいでしょう。
- 話し合いの流れを意識する
話し合いの流れを意識して記録することで、後で見直したときに、話し合いの内容を理解しやすくなります。
- 話し合いの参加者の意見を分けて記録する
話し合いの参加者の意見を分けて記録することで、それぞれの意見を比較しやすくなります。
具体的には、以下のようなものが考えられます。
- 話し合いの目的やテーマを明記する
- 話し合いの参加者の名前を記載する
- 話し合いの流れを箇条書きで記載する
- 話し合いで出てきた意見や提案を箇条書きで記載する
- 話し合いで合意した事項を記載する
また、話し合いの記録を電子ファイルで作成しておくと、後で見直すのに便利です。
さらに、話し合いの記録を家族や友人と共有しておくと、話し合いの内容をより深く理解することができます。
人生会議はいつから始めておいたら良いか
具体的には、以下のタイミングが考えられます。
- 若いうち
若いうちは、自分の価値観や人生観を明確にしやすい時期です。また、病気やケガのリスクも低いため、人生会議を進めやすいといえます。
- 中高年期
中高年期は、人生の折り返し地点を迎える時期です。自分の生き方や死生観を見つめ直す良い機会となります。
- 老年期
老年期は、病気やケガのリスクが高まる時期です。もしものときに備えて、人生会議を進めておくことが大切です。
また、人生会議は、定期的に行うことも大切です。
具体的には、以下のタイミングで行うことをおすすめします。
- 人生の節目ごとに
結婚、出産、退職など、人生の節目ごとに、自分の考えや状況を振り返る機会を設けましょう。
- 病気やケガをしたとき
病気やケガによって、自分の意思を伝えることが難しくなる可能性があります。そのため、病気やケガをしたときは、人生会議を進めておくことが大切です。
人生会議は、いつから始めてもよいですが、早めに始めておくことで、以下のメリットがあります。
- 自分の考えや希望を明確にできる
- 家族や友人の理解を得ることができる
- もしものときに備えることができる
人生会議は、一人で行うのではなく、家族や友人と話し合うことが大切です。また、医療・ケアチームのサポートを受けることも検討しましょう。
人生会議は、人生の最終段階における医療やケアを円滑に進めるために、非常に重要な取り組みです。ぜひ、家族や友人と一緒に、人生会議について話し合ってみませんか。
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html
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