精神科に関わる児童相談所〜一次保護からの委託~

精神科

精神科では、児童相談所を通して一時保護委託の児童を受け入れる場合があaります。

そのような場合は、医療機関としてだけでなく、保護施設という側面も併せ持つため、他の任意入院の患者さんとは異なった対応や注意事項が必要となります。

この記事では、一次保護委託の患者さんを初めて受け持った場合でもわかりやすいように、一次保護の仕組みから入院中の注意点について解説していきたいと思います。

知識としては本当に基本的な内容となりますが、法律などの根拠を知らない方は是非最後の引用資料まで読んでみてください!

一時保護の概要と、任意入院との違い

まずは一時保護の仕組みそのものについて解説していきたいと思います。

児童の一時保護については、児童福祉法という法律によって定められています。

児童福祉法第三十三条 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

つまり、つまり児童が虐待を受けている場合や、親の養育能力がない場合、

という流れで精神科に入院するのです。

実際に一時保護の対象となる児童については次のような場合です。

緊急保護
(ア)適当な保護者がいない場合
(イ)虐待を受けた子どもの保護
(ウ)子どもに自傷・他害のリスクがある場合(2)行動観察(3)短期入所指導

(資料は巻末に添付しています)

このうち精神科に一時保護の委託となるのは(イ)(ウ)などで、

PTSDや適応障害などの疾患治療のために入院加療が必要な場合です。

精神科で勤務していたら、ここまでは知っている人がほとんどです。

このような場合、ほとんどの児童が“任意入院”として入院します。

しかし、「入院は任意だから退院する!」といっても簡単に退院できません。

これがどうしてなのか、根拠を説明できる人はかなり少ないと思います。

かなり古くてマニアックな資料ではありますが、公式なエビデンスとなるのはこちらの画像です。

『平成17年度全国児童相談所長会議資料 資料9:精神病院への一時保護委託について』より

つまり

「“任意入院”や“医療保護入院”などのくくりとは別で治療のために病院に置いといて!!」

というのが一時保護委託による入院なのです。

このように、表面の手続き上は任意入院として入院する場合でも実際のところ「精神保健福祉法は置いといて、児童福祉法に基づいて病院で治療してあげて!」という状況になっています。

そこで任意入院とは異なるいくつかの注意点が発生します。

ここから詳しく説明していきます。

一時保護の場合の注意事項

一時保護委託の場合、その身柄の保護が最重要とされるので、いくつか注意点があります。

厚生労働省の資料『児童相談所運営指針の改正について:第5章 一時保護』によると『子どもに関する面会、電話、文書等への対応』として通信や面会の制限について規定されています。

一言でいうと

人権を尊重しつつも、虐待から守るために通信や面会は制限できる

という内容です。

虐待している親からすれば「“教育”として暴力をふるってきたが、保護という形で子どもを取り上げられた」という思考になる場合もあるので、虐待した親が子どもに対して接触を試みる場合があります。

他にも、身柄の保護のために必要なこととして、『無断外出への対応』が規定されています。

これは一言でいうと

保護している児童の無断外出は本気で防がなければいけない

という内容です。

無断で外出しないように対策をしなさい!と決められています。

そのため僕の病院では買い物や学校に関してはPSWさんが同伴して外出しています。

離院なんてことがあれば、本当に一大事です。

初めに説明したように精神科病院は“保護の委託先として適切”である必要があるのです。

まとめ

一時保護委託の場合、看護師ひとりひとりが盾となって患者さんを守ってあげる必要があります。

実際に僕の経験でも、

よくわからない人から問い合わせの電話がかかってきたり

よくわからない人権団体を名乗る職員が押しかけてきたり

なにかとトラブルが発生します。

(患者さんの個人情報となるため、入院していること自体教えません。)

みなさんも病院に一時保護委託の患者さんがいる場合は、やり取りや対応について注意して接してみてください。

具体的な事例への対応などは今後改めて更新していきます!

それではまた!

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関連参考資料

今回本文で解説した内容は厚生労働省を参照しています。

この記事で取り扱った内容に関わることを引用します。

全文を読みたい方は参考文献のリンクより厚生労働省HPをご覧ください。

『児童相談所運営指針の改正について:第5章 一時保護』より引用

第1節 一時保護の目的と性格 より抜粋1.一時保護の必要性一時保護を行う必要がある場合はおおむね次のとおりである。(1) 緊急保護 ア 棄児、迷子、家出した子ども等現に適当な保護者又は宿所がないために緊急にその子どもを保護する必要がある場合イ 虐待、放任等の理由によりその子どもを家庭から一時引き離す必要がある場合(虐待を受けた子どもについて法第27条第1項第3号の措置(法第28条の規定によるものを除く)が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつこれを認めた場合には再び虐待が行われ、又は虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認める場合を含む。)ウ 子どもの行動が自己又は他人の生命、身体、財産に危害を及ぼし若しくはそのおそれがある場合(2) 行動観察 適切かつ具体的な援助指針を定めるために、一時保護による十分な行動観察、生活指導等を行う必要がある場合(3) 短期入所指導 短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導等が有効であると判断される場合であって、地理的に遠隔又は子どもの性格、環境等の条件により、他の方法による援助が困難又は不適当であると判断される場合
第3節 一時保護所の運営 より抜粋6.無断外出への対応(1) 一時保護所からの無断外出は子どもの最善の利益を損なうことにもつながりかねないものであり、児童相談所としても、できる限りこれらの防止に努める。具体的な対応は、子どもの状態や当該児童相談所の体制に基づき工夫していくこととなるが、例えば、一時保護所からの自由な出入りを制限する、その子どもを他の子どもとは別の部屋で生活させ常時職員の目が届くようにしておく、その子どもに特別な日課を用意する、といった対応もケースによっては採りうるようにしておくことが考えられる。(2) 一時保護中の子どもが無断外出したときは、児童相談所職員が自らその子どもの発見、保護に努めるとともに、保護者その他の関係者に連絡し可能な限り捜索する。また、必要に応じ警察署に連絡して発見、保護を依頼する。一時保護を解除する場合においても原則として保護者等の了解を得てから行い、一方的な一時保護の解除は避ける。(3) 一時保護中の子どもが無断外出し、他の都道府県等の児童相談所等に一時保護された場合には、子どもの福祉を十分勘案し、いずれが移送あるいは引取りをするかを決定する。原則として、もとの児童相談所が現に子どもの身柄を保護している児童相談所に引取りに行くことが望ましい。(4) 一時保護中の子どもが無断外出した場合は、その原因を検証し、対応策を講じるなど、再発防止に努めるものとする。
7.子どもに関する面会、電話、文書等への対応(1) 入所中の子どもに関する面会、電話、手紙等の文書等への対応については、その子どもの人権に十分配慮しつつ、その福祉向上の観点から行う必要がある。(2) 保護者等による虐待等のために保護者等の同意が得られずに一時保護した子どもについて、保護者等が面会や引取りを求めてきた場合には、児童相談所長又は都道府県知事等が必要と認める場合には、子どもの親権を行う者又は未成年後見人の同意が得られない場合でも、また、家庭裁判所の決定によらない場合でも一時保護を行うことができるとされていることから(昭和36年6月30日児発第158号)、これを拒む等、子どもの福祉を最優先した毅然とした対応を行う。 また、一時保護している子どもについて、家庭裁判所に対し法第28条第1項の規定に基づく承認に関する審判を申し立てた場合は、家庭裁判所は、審判前の保全処分として、承認に関する審判が効力を生ずるまでの間、保護者について子どもとの面会又は通信を制限することができるので、保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、本保全処分の申立てを検討する。なお、保護者等の強引な面会や引取りに対しては、必要に応じ、子ども又は担当者に対する保護者等の加害行為等に対して迅速な援助が得られるよう、警察に対し、児童虐待防止法第10条に準じた対応を依頼するのが適当である。(3) 一時保護中の子どもに対して警察等による聴取がある場合には、児童福祉の観点から、本人及び他の一時保護中の子どもに与える影響に特に注意し、本人、保護者等の同意、保護者、職員の立ち会い、聴取の場所、時間等について十分留意する。
第5節 委託一時保護(1) 子どもを一時保護する必要がある場合は、一時保護所を利用することを原則とするが、次に掲げる理由で委託一時保護を行うことが適当と判断される場合には、その子どもを警察署、医療機関、児童福祉施設、里親その他適当な者(児童委員、その子どもが通っている保育所の保育士、学校(幼稚園、小学校等)の教員など)に一時保護を委託することができる。この場合においては、受理会議等で慎重に検討し決定する。 (中略)[3] 自傷、他害のおそれがある等行動上監護することが極めて困難な場合   (以下略)

参考文献

『児童相談所運営指針の改正について:第5章 一時保護』厚生労働省HP

『平成17年度全国児童相談所長会議資料 資料9:精神病院への一時保護委託について』 WAM NET 

看護師S田さん
看護師S田さん

京都大学卒業後、とある病院で看護師として勤務しながら、看護師の知識向上のため、「ナースイッチ」を創設。日々臨床と研究を両立しながら看護に向き合っています。

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