精神科保護室とは?看護師の役割を解説!

あいまいにしない精神科看護

精神科には保護室という名前の特殊な部屋があります。

患者さんの安全のために隔離するために使用する部屋で、「監禁される部屋」というようなマイナスなイメージの強い部屋です。

しかし、精神科病棟にとってはなくてはならない大切な部屋です。

この記事では精神科急性期病棟に勤務するS田が実際の現場の目線も含めて保護室について解説していきます。

保護室ってなに?

保護室とは、精神科において患者さんの安全を確保するための特殊なお部屋です。

外側から鍵がかかり、患者さんの意志では外に出られないことから、あまり良い印象は持たれない場所ですが、患者さんの安全を守る上では必要な部屋になっています。

保護室の目的は大きく分けて2つあり

  1. 刺激の少ない環境
  2. 危険の少ない環境

という意図です。

「刺激の少ない環境」というのは

  • 全ての人が自分を狙っているように感じる
  • 幻聴や幻覚の症状が強く出ている

という患者さんに、きちんと安全な場所であることを示しつつ最低限のものしかない環境で過ごしてもらうことを指します。

(臨床において、この場合は患者さんにとって保護室は外部よりも安心できる場所となることが多い印象です)

「危険の少ない環境」というのは

  • 身近にある物をとにかく手に取ってでも自殺を図りたい
  • 近くにいる人を誰でもいいから殴りたい

などの自傷や他害の危険性がとても高い患者さんに関して、患者さんやその周囲の人を守る目的で入室していただく場合を指します。

これら2つの目的のどちらかが必要な場合、医師の指示の下で隔離が開始となるのです。

もちろん隔離に関しては本当に必要な場合に最低限に限って行うという人権配慮はふまえて実施されます。

保護室の造り

保護室は、刺激の少なく危険も少ないことを目的に用意される部屋であるため、おおよそ6畳ほどのスペースにトイレと手洗い場があるだけになっています。

どこかに衣類をひっかけて首を吊ってしまわないよう、扉や壁も最低限の造りになっています。

少しイメージがつきにくいかと思うので、画像検索の検索画面を参照してもらえればと思います。

詳しく確認したい方は、画像をアップしている以下のページをご確認ください。

精神科病棟内の隔離室を紹介 | ブログ | 横浜市立みなと赤十字病院 看護部

患者さんは入浴などを除いてほとんど24時間をこの部屋で過ごすことになります。

健全な私達が入室したら、本当に苦痛な時間になってしまいます。

おそらく患者さんにとっても居心地の良い部屋ではないはずです。

(記憶すらはっきりしないほど精神状態が高まっている場合もあるため、不快ですらないこともあるようです)

また、患者さんの症状によってはトイレの水を自分で流せないように止めてしまうこともあります。精神症状によってトイレの中の水を飲んでしまったりすることを防ぐためで、もちろん意地悪ではありません。

必要な時に看護師が外から操作して流しています。

患者さんが保護室に入る時は・・・

保護室に入る時には、保護室内で危険な行動をしないために持ち物や服装にも指定があります。

まず、自分で自分を傷つけることを防ぐために半袖半ズボンの着用をしてもらっています。

切迫した希死念慮のある方にとっては、全ての持ち物が凶器になってしまうので長いひも状のものは排除する目的です。

女性の方はブラジャーの着用も出来ません。

それ一つで首をくくるのは簡単なので持ち込みは出来ない扱いになっています。

そして眼鏡も持ち込み出来ません。

眼鏡を割った場合、それは患者さん自身も看護スタッフも傷つけることの出来る武器になってしまいます。

入室中の私物については適切な管理の下で預かり、必要に応じて看護師が用意する形になります。看護師と患者さんの信頼関係がきちんと構築されていることが重要になってきまう。

●保護室での看護

保護室の患者さんへの看護で1番大切なのは、

患者さんも看護師も傷つかない治療環境の整備

です。

患者さんが自分自身を傷つけることなく、看護師に対して暴力をふるってスタッフが受傷しないように生活出来る環境を整備することが重要です。

保護室における患者さんとの関わり方に関しては、刺激を減らすという観点から最低限の関わりに留めることが多いです。

というのも、保護室に入室する状態の患者さんは看護師の関わりや声掛けで症状が改善するレベルではない場合がほとんどだからです。

  • 保護室という刺激の少ない環境そのもので症状が落ち着く
  • 保護室という危険の少ない環境で薬剤調整を行って薬の力で改善する

というどちらかで症状や衝動性が落ち着いていくのを見守って待つことしかできないのが現状なのです。

そこで看護師に求められる役割は、保護室で患者さんが継続して安全に過ごせることを支援することなのです。

まとめ

保護室という精神科ならではの特殊な部屋について解説してみました。

はたから見ると閉じ込めているような状態に見えますが、その実態は患者さんを守るために用意された場所なのです。

看護師として、患者さんが安全に過ごせる環境を提供できるよう、患者さんの目線に立って考えて向き合うことが必要なのかと感じます。

今後もNur-switchでは看護師の方に役立つ情報を発信していきますので、是非他の記事もご覧ください!
それではまた!

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【参考文献】

保護室イメージ画像引用元

精神科病棟内の隔離室を紹介 | ブログ | 横浜市立みなと赤十字病院 看護部

看護師S田さん
看護師S田さん

京都大学卒業後、とある病院で看護師として勤務しながら、看護師の知識向上のため、「ナースイッチ」を創設。日々臨床と研究を両立しながら看護に向き合っています。

コメント

  1. […] 自分が担当していた患者さんが入院されて急性期病棟の保護室に入ったのですが、看護師との関係がうまくいかなかったのです。その患者さんにとっては、看護師との関係性は対等ではなく、どちらかというと上下関係に思えて、そこに抵抗感を覚えたのだと思います。 […]

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