こんにちは、精神科ナースのS田です。
ロシア・ウクライナ問題で緊迫した状況が続いています。多くの被害が出ており、難民の受け入れや国際的な経済政策などの様々な問題が発生しています。そのトピックについて看護師という目線でふと思い出したのが、学生時代のテキストで触れられていた「移民のメンタルヘルス」というパートです。
そこでこの記事では、系統看護学講座というテキストから「移民や移住者のメンタルヘルス」というチャプターを引用した上で、実際の体験談も合わせて紹介していこうと思います。
戦争や紛争では、戦闘で傷つけられた人々への関心が集まりますが、戦闘から逃れて難民となった人々も、生活の中で大きくストレスに晒されます。
今回の戦争問題での難民などの方以外にも、知らないところへの引っ越しや転勤においても当てはまる内容になっています。
それではいきましょう!
根拠に基づく「移住のストレス」とは
人が今まで住んでいたところから移動するというのは大きなストレスを感じます。
そして転居には、「住居が変わる」以外にも「家族との別居」や「仕事環境の変化」などが合わせて起こる場合が多いです。遠距離での移動ともなれば、文化的な違いも発生します。
テキストによると、
難民や移民だけでなく,新たな環境への移動や一時的滞在などの際にも,さまざまな問題が生じる。 これは今日,新たな文化への不適応や多文化ストレスと呼ばれることもある。 しかし,これは先に記した「文化葛藤」や「文化変容」と同じ質のものであることがわかる。 たとえば,難民の第一世代・第二世代で,移住後に抑うつや自殺,あるいは薬物依存やアルコール依存に陥る危険性が非常に高い。 |
と書かれています。ここでいう文化葛藤や文化変容とは、文化の異なる環境で影響を及ぼしあうことを言います。
つまり、一時的なものでも移住としてのストレス要因が関係すること、移住者だけでなくその子どもなどの次の世代の人も精神疾患にかかるリスクが高いことがわかります。
そして具体的なストレス要因については下のようなものがあります。
①移住に伴う社会的・経済的地位の低下 ②移住した国の言葉が話せないこと ③家族離散,もしくは家族との別離 ④受け入れ国の友好的態度の欠如 ⑤同じ文化圏の人々に接触できないこと ⑥移住に先だつ心的外傷(PTSD),もしくは持続したストレス⑦老齢期と思春期世代の適応困難性 |
特に、戦争での難民の方に起こりやすいのが⑥番目です。
目の前で大切なものが崩れていき、時に人の死を目の前にする状況は彼らの心に大きなダメージを与えることは容易に想像できます。
(というより、想像しきれないほどの傷を残しているのではないでしょうか)
しかし、同時に③番目の家族との別離などが起こることも考えられます。
親戚がどこに居るかもわからない、わかったとしても会うことが出来ないといった環境を想像するだけで心が痛みます。
このようなストレス要因について理解した上で、該当している問題を抽出して対処を検討する問題解決過程がとても重要になります。
S田の体験談「関西移住」
さて、真面目な話が続いてしまっているので、ここで僕の関西への移住とその時に感じたストレスなどを先ほどの7つの項目に当てはめて紹介してみます。
実家を離れて京都で寮生活を開始した僕は家族と離れて暮らすことになったので「③家族離散,もしくは家族との別離」が当てはまります。
といっても、元々家族と離れることに慣れていたので、そこまで大きな負担には感じませんでした。初めての一人暮らしの人や、愛するペットを実家に残しての旅立ちの場合はかなり悩む大学生も身近に多かったです。
あまり深刻な悩みを書き綴ってもしょうがないので、「②移住した国の言葉が話せないこと」について紹介します。そうです、関西弁です。
当時の僕は関西弁に積極的に憧れていたというわけではありませんでしたが、部活や寮などで関西弁に触れ続ける生活をしているうちに語尾などが自然と口になじんでしまいました。
しかしながら本場の関西人から言われ続けたのが「エセ関西弁」という冷酷な非難でした。
標準語で過ごしている期間以上に「エセ関西弁」と言われながらイジられることの方がストレスだったのが印象的です。
あのイジりはなんだったんでしょうか。「ほんまに!!もう!!」という感じです(笑)
まとめ
いかがだったでしょうか。
移住のストレスを根拠に基づいて考えてみると、患者さんや対象者さんの状況をアセスメントする上で役に立つかと思います。

もし良ければ、“自分の移住体験”も今回紹介した7つの項目に分けることで「こんなことが辛かったんだ」「ここが大変だったよ」という話のネタにしていけるのではないかと思います(笑)
それではまた!
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【参考文献】
系統看護学講座 専門分野Ⅱ 精神看護学1 第4版5刷
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