精神科のお薬というと、
コワい、不安、危なそう。というイメージがありますよね。
特に「薬剤の依存」と聞くと、不安なイメージがあり、飲みたくなくなったり辞めたくなったりすることがあるかもしれません。
今回は、精神科のお薬の中でも特に依存について注意が必要なベンゾジアゼピン系の薬の依存について紹介します。
やみくもに怖がるのではなく、正しい知識を持って適切に対応していきましょう!
ベンゾジアゼピン系の2種類の依存?
ベンゾジアゼピン系の薬といえば、一般的にはエチゾラム(デパス)、ブロマゼパム(セニラン)、ジアゼパムなどの薬剤のグループを指します。
「~~アム・パム」と語尾に付くものが多いので、名前を聞くと見分けやすいです。
(たまに違うものもあり、~~パムとついてもベンゾジアゼピン系ではないので、簡単に把握する程度の参考にしてくださいね。)
これらは、抗不安薬や睡眠薬として使われているものが多いですが、ベンゾジアゼピン系の薬は、特に依存リスクが高いということで知られています。
依存には、心の依存と体の依存の2種類があります。
心の依存は、薬を使うと気持ちが楽になることから、頼りたく甘えたくなってしまうことで生じる依存です。体の依存は、身体が薬に慣れてしまい、どんどん効きににくくなることや、薬が切れてくると自覚なく不調になっていくことから生じる依存です。
データによると、一般的に精神的な依存は2~3ヶ月かかり、身体的な依存は3~8ヶ月の期間が必要です。つまり、ベンゾジアゼピン系の薬を連続して長期間使用すると、身体的にも精神的にも依存する可能性があります。
(参考:こころの治療薬ハンドブック 第12版 P340 解説)
そんな依存から抜けるためには、精神科で医師と相談し、薬を徐々に減らすことが行われます。
もし自分の飲んでいる薬について不安になったら、自分の判断で勝手に辞めるのではなく、主治医の先生と薬の減らし方について相談してみてください!
お薬を減らしていくとどうなる?
薬を減らしていく時に起きる変化について紹介します。
その時に、看護師が見ていくべきポイントがあります。
それが、①症状の再燃 ②反跳作用 ③離脱症状です。
もちろん、この3つが発生することなく落ち着いた経過を辿ることもありますが、医療者がアンテナを張っていく必要があるのはこの3つです。
①症状の再燃
症状の再燃は、もともとあった不安や不眠などの症状がまた発症することです。
患者さんの主観的な訴えがそれらの症状を表していたり、「前みたいに辛い」と直接的に再燃の把握に繋がる発言をすることもあります。
例えば、寝れなかった症状が薬を飲んで眠れるようになったが、薬を止めたら再び眠れなくなった場合などを見ています。
②反跳症状
「反跳作用」は文字通り“跳ねるように反発する力”を指し、薬を飲む前よりも症状が強くなる現象です。例えば、不安な気持ちがあったために薬を飲んでいたが、薬を減らしたら、以前の不安以上に強く不安な気持ちになることを指します。
反跳作用に関しては僕の経験上、落ち着きがなくなったり、不眠でほとんど寝ずに起きていたり、ふさぎ込んだりと、客観的に収集できる範囲で変化を生じることが多い印象です。(主訴は大きく変わらず「不安」「眠れない」という言葉が継続するので判断は難しいです。)
③離脱症状
最後に、薬の依存から薬を減らした場合には、「離脱症状」に注意することが重要です。
離脱症状には色々な種類があり、ベンゾジアゼピン系の離脱症状のせいかどうかはなかなか判断するのが難しいと言われています。
中でも特に次のような症状には注意することが大切です。
- 音や光への知覚過敏
- 味覚障害のような症状がある
- 動揺感や動揺視がある
これらは、離脱症状の疑いによるものと考えられます。離脱症状が起きたら、通常、症状は5日から2週間で収まることが多いです。それまでは少し辛い期間がありますし、薬の減らしのペースも人それぞれです。
医師の処方に合わせた適切な内服を心がけましょう。
S田の臨床経験
ここからは僕が臨床看護師として、ベンゾジアゼピン系の薬物依存患者さんを見ていて学んだことを紹介していきます。個人的な経験に基づく視点も含まれるので、参考程度にご覧ください。
まず本当に学んだのは、当事者の多くは依存の自覚がないことです。
薬に助けてもらっているということもありますし、“頼りにしている”という感覚を持っているからか、依存ということを考えてもいません。
つまり、薬への信頼と依存は紙一重なのです。
また、身体的な依存に関しては、例えるならタバコを吸う人の“吸いたい感覚”のようなものだそうです。
薬が切れるとイライラして気持ちが不安定になりますが、薬を飲んで効いた頃には、胸の辺りの不安が落ち着いてくるという感覚になるそうです。これ、結構多くの患者さんたちから聞きます。
なので、タバコを吸えない人が“吸いたいイライラやソワソワ”を抱えるイメージと覚えておくといいでしょう。
まとめ
今回はベンゾジアゼピン系の薬の依存や、調整の時の観察ポイントを紹介しました。
薬自体を使うことは悪いことではないし、薬に頼って過ごすことも必要なことですが、過剰な依存に対しては正しい知識を持って、正しい医療者とコミュニケーションをとって、うまく使っていくことが必要です。
この記事を読んで、むしろ少し不安になった人もいるかもしれません。
しかし、適切な使用に関しては、非常に有効な薬物であると思います。もし不安を感じた場合は、気軽に近くの医師に相談してください。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
それではまた!
【参考文献】
こころの治療薬ハンドブック 第12版 P340 解説
ベンゾジアゼピン系作動薬の長期投薬とそのリスクについて 清水聖保
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