看護の実習や新人指導の現場で「根拠はなに??」と口うるさく言われることがあります。
「もう耳タコだよ!」と感じる方が多いかと思いますが、実はこの質問はとても大切な意図があるのです。
今回は、根拠に基づいた看護、EBNについて解説していきます。言葉の意味だけでなく、現場で実践できるような知識をお伝えします!
EBNの言葉の意味
看護の世界でたまに目にするEBNやEBPやEBMという言葉
それぞれの意味をご存知でしょうか?
似ている英語が並んでいて、違いがよくわからない!!という方も居るかと思います。
まずはそんなEBNやEBP、EBMとはなんなのかを解説していきたいと思います。
先に言葉の意味の答え合わせからいきます!
それぞれの言葉の意味はこちら↓

EBM・・・Evidence Based Medicineという言葉は、もともと1991年にGuyatt G氏の論文で初めて使われた表現で、
エビデンス(根拠)に基づく医療
という意味です。
この1本の論文から、世界中でEBMという言葉が使用されるようになりました。
その後、この言葉は分野に合わせて形を変え、
EBN・・・Evidence Based Nursing
根拠に基づく看護
EBP・・・Evidence Based Practice
根拠に基づく実践
という言葉に派生してきました。
意味は近いですが、大きな枠組みとしては
EBM>EBN>EBP
という順番で広い意味の領域を示しています。
Nur-switchでは看護に関する情報を扱っているため、EBNが適切かと考え、サイト内でこの表現を使用しています。
EBNの意義
ここまで言葉の説明をしてきましたが、実際にどうしてEBNが重要なのでしょうか。
(以下引用)
看護においては,以前より「なぜそうするのか」という実践の根拠を問いつつケアを行うことの重要性が強調されてきた.また20世紀後半には,科学的根拠を探求して,看護研究の数は急増した.しかしながら,看護実践の現場には,「なぜ」という実践の根拠を問われると,根拠がはっきりしないにもかかわらず行っているケアがたくさんある.EBNは,看護ケアの根拠を改めて問い直し,その患者にとって現時点で得られる最善のエビデンスを,看護の専門的知識を用いて判断し,良心的にそして思慮深く使っていくことである.
(看護のための最新医学講座第36巻 EBNと臨床研究)
実際に看護の現場では「なんで?」「どうして?」と聞かれることが多いです。
看護学生は実習指導者に何度も聞かれて涙目になり、新人ナースは先輩ナースから聞かれておどおどしてしまう質問です。
「なんで?」という質問には、「どうしてその判断に至ったか」を説明できなければいけません。
患者さんの命を預かり、医療に携わる上で、あいまいな理由ではなく明確な根拠を持って行動することが大前提なのです。
知らないとまずい!根拠に基づいていない勘違いEBN!
ここまで、患者さんの最善の治療利益のためには根拠に基づいた看護の実践が必要だと説明しました。
しかし、臨床現場ではこの「根拠」を勘違いして実践している場合があります。
「私はこう思う、っていう根拠があります」
「私の感覚ではこうした方がいいかな、っていう根拠があります」
臨床ではたまに耳にします。しかし…
あなたの個人的な感覚は根拠に入りません!!!
本当にこれ大事です。
病棟に長くいるナースでも、こんなことを言っていたりします。
しかし、たとえ経験が長いナースであってもそれは違います!!!
(本当に強調させてください!)
エビデンスの前提として必要なのが、一般性と再現性です。「私はこう思う」という個人的な感覚に頼りすぎると、重要な兆候や別の可能性を見落としてしまう恐れがあります。
誰か一人の「なんとなく」で判断しないようにしましょう!
とはいえ、“根拠に基づいた経験則”を養うことはとても重要なことなので、「なんで?」に答えを出して積み重ねることは重要です。この部分については今後詳しい記事にしていきます。
実際にEBMってどうするの?
では、根拠に基づいた看護って実際どうすれば良いのでしょうか?
根拠に基づく看護を行う上での重要なポイントは2つです。
1.根拠が必要なタイミングを理解する!
2.正しく根拠を使う順序を理解する!
この2つです。
1つずつ丁寧に解説していきます!
1.根拠が必要なタイミングを理解する!
「根拠はな~に?」というように、看護師に根拠を求めるタイミングは2つしかありません。
今回はわかりやすくSOAPの形式でお伝えしていきます。
看護過程SOAPは
- S:主観的情報
- O:客観的情報
- A:アセスメント
- P:プラン
の流れで看護を展開することです。
一般には記録の形式として扱われていますが、この手順で情報を整理することで再現性のある看護を行うことが出来ます。
ここで重要なのは、SとOをもとにAを検討する時に「どの情報からアセスメントしたか」をはっきりさせることです。
そして、患者さんから収集した情報の他に、解剖学・生理学や看護理論などの根拠も活用して総合的に判断することも大切です。
また、患者さんへのプランを立てる時にも根拠を明確にして看護を実施します。
つまり、根拠をもとに臨床判断を行うのは、AとPを検討するときです!!
2.正しく根拠を使う手順を理解する!
根拠を使うタイミングは
まずは実際の流れと、S田なりにかみ砕いた内容で解説します。

(看護のための最新医学講座第36巻 EBNと臨床研究)
書籍(根拠)によると、このような流れで実際のEBNが構築されています。
ではこのエビデンスに基づいてS田なりに(実践的に)かみ砕くと・・・

このような流れで実際には看護に反映させていきましょう!
エビデンス(根拠)といっても、みんなが論文を読まなければいけないわけではありません。
「論文は難しくて読めないです・・・」という方のために優しくまとめてあるのがテキストなので、教科書やテキストは十分エビデンスと呼べるでしょう。
(エビデンスレベルについては他の記事で紹介します!)
これを見ると、先ほど書いたような、看護学生や新人ナースが聞かれる「なんで?」というボディブローのような一言は
「①という問題に、④という行動をするのはどんな②③の根拠があるの?」
と言い換えることが出来ます。
あいまいな、なんとなく、で看護をしないために、このような流れで判断できるよう心がけていきましょう。
実際に②での情報の探し方や、③での吟味の方法については今後この看護師スイッチで発信していきたいと思うので、今後もご覧ください!
まとめ

EBN(エビデンスに基づいた看護)について、基本的な情報をお伝えしてきました。
エビデンスと言われると構えてしまうイメージですが、実は看護学生の時から実習で出会っているものです。
看護師として働いているとどうしても十分に学習する時間が取れない場合があります。
しかし臨床現場にデビューしたからといって、教科書がほこりをかぶっているような状態にならないようにしましょう。
そして、積極的に学習をして知識を積み上げていきましょう!
今後も引き続きわかりやすい形でまとめるよう発信していくので、是非他の記事も見てみてください!!
それではまた!
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参考文献
「看護のための最新医学講座第36巻 EBNと臨床研究」 日野原重明ら
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