精神科での頓服薬の使い方

あいまいにしない精神科看護

精神科では、“トンプク”と呼ばれるお薬があります。

日付や時間の指定がなく、症状に合わせて使用する頓服薬に関しては看護師の判断が重要な場合があります。

今回は精神科の頓服薬に関して、看護師が配薬する上で必要となる基礎知識について蛍雪していきたいと思います。

頓服薬とは

頓服薬とは、決まった時間に飲むお薬とは別で“症状がつらいとき”に追加で飲むお薬のことです。

わかりやすいのが痛み止めです。

みなさんも日常で“痛みが強いとき”に自分で飲んで調整することが出来ますね。

精神科では

などの、“心の痛み止め”のようなお薬があります。

頓服薬の使用によって、患者さんの精神的な負担を減らして落ち着いて過ごせるように援助していきます。

基本的には対症療法的な使用になるので、

「悩みが多くて辛いです」という患者さんが頓服薬を使用することで、「落ち着いて悩みを整理する環境」を支援することはできますが、「患者さんの悩みの種を取り除く」ことはできません。

このような頓服薬を飲むタイミングについては、自分で管理して調整出来る患者さん看護師が管理して配薬する場合があります。

患者さんが自分で管理する場合は看護師が介入することは少ないですが、看護師が管理して配薬する場合は、患者さんの状況をアセスメントして適切に与薬する必要があります。

この「頓服薬の使い方」には看護師の力量が出ます。

(と僕は個人的に思っています。)

頓服薬の与薬の2つの流れ

頓服薬の使用に関して、手続き的な意味では6Rを確認してダブルチェックをして・・・なんてことがありますが、手順ではなく中身の話をしていきたいと思います。

看護師が管理している頓服薬を患者さんが使用するには、2つのパターンがあります。

・看護師の判断で内服を提案して与薬する場合

・患者さんが頓服薬を希望して与薬する場合

「そりゃそうだろ!」という感じなのですが、実は大きな違いがあります。

患者さんが頓服を希望する場合、その患者さんは自分自身の不調のサインに自分で気づくことが出来ています。

(精神科で働いていると実感しますが、不調の自覚が出来るだけでも本当にすごいことです。)

看護師の判断で内服を提案する場合は、患者さんの不調を看護師がアセスメントして渡すため、普段との違いや信頼関係が直結するやり取りが発生するのです。

ここから、それぞれの場合に分けて詳しく解説していきます。

1.看護師の判断で内服を提案する場合

看護師が患者さんに頓服薬の使用を提案する場合の流れを細かく分けると以下のようになります。

(1)患者さんの不調に看護師が気付く

患者さんの日々の状態との変化を把握していれば、「いつもと違う」という違和感に気づくことがあります。また、明らかに粗暴な行動や言動がみられる場合は客観的にもすぐに察知することが出来ます。

不調の表出方法は患者さんによって傾向が異なるため、患者理解と日々の観察がとても重要になってきます。

(2)看護師が頓服薬を促す

必要に応じて看護師が頓服薬の使用を提案する場合、患者さんの状態と頓服薬の作用について正しい理解の上で提案することが必要になります。

また、患者さんが不調であっても頓服薬を提案しない場合もあります。

頓服薬を使っちゃいけない場合については他の記事で解説していきます。

そして頓服薬の使用については他の薬剤の使用状況やこの後の内服予定とも照らし合わせて与薬することが必要となります。

例えば、食後のお薬を飲んだ直後に不調になった場合、まずは直前に内服した薬の薬効を待つ場合も多いです。

(3)患者さんが承諾して内服する

看護師の判断で頓服薬の与薬を提案することになっても、それを飲んでくれるかどうかは患者さん次第です。

看護師が頓服薬の内服を提案しなければならないケースでは、患者さんは精神状態や発達的に“頓服薬の必要性”について十分な判断力を持っていない場合が多いです。

極端な場合には、時として頓服薬の域を超えてCVPPPにより筋肉注射を実施する場合などもあります。

また、患者さんに判断力が備わっている場合でも、患者さんが看護師の提案を受け入れるには、患者―看護師関係での信頼関係が構築されていなければ成り立ちません。

そのため患者さんが「客観的には頓服薬が必要な場合」であっても、本人が内服を積極的に希望しない場合は患者さんの想いを尊重しつつ臨機応変に対応することが求められます。

2.患者さんが頓服薬を希望して与薬する場合

患者さんが自ら頓服薬の内服を希望する場合の前提として、患者さんは自分の不調に気付いてSOSを発信することが出来ています。

そこで頓服薬を準備して渡す際に、辛さや不調をねぎらうような声かけを行うことがとても重要な関わりといえます。(臨床的な見解としてになりますが…)

また、不調を自覚した上で患者さんが頓服薬の内服を希望している際には、患者さんは頓服薬の使用によって「楽になる」ことを望んでいます。

僕の経験則ですが、このように積極的に頓服薬を有効活用する患者さんは“飲みごこち”にも敏感な場合が多いです。

自身で積極的に頓服薬を活用する患者さんの場合、患者さんの飲みごこちと客観的情報によって薬効を経過観察することが必要になっていきます。

「これ全然効いてないです」

と患者さんからの発言(S情報)があっても、内服前に比べて荒い行動が減り、口調も穏やかになっている(O情報)ような場合は、実際に客観的に薬効がみられることもあります。

また、患者さんが希望しているからといってなんでも渡していいわけではありません。

本当にその時に使用するのが適切なのかを判断して関わることが重要となります。

例えば1日3回までのお薬を午前中に使いきってしまうと、午後の不調の際に対応が困難になります。頓服薬の使用ペースなども、看護師が調整していく場面もあるのです。

このように、患者さんが頓服薬を希望して与薬する際には、与薬時のささやかな声かけや必要性のアセスメントが大切です。

まとめ

今回は精神科における頓服薬について解説してきました。

精神科では身体科とは異なって「こころがつらいとき」に“トンプク”を使うという背景であるがゆえに、頓服薬の使用に関して看護師のスキルが試される場面が多くあります。

みなさんも、ただ渡すだけ、ではなくきちんとアセスメントしてから使用出来るようになりましょう!

今後も引き続き精神科スイッチで記事として更新していくので、是非ご覧ください!

それではまた!

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