ICUでのウィーニングと抜管時の看護の流れ

ICU
namiさん
namiさん

京都大学卒業後、とある大学病院のICUでコロナに追われて奮闘中。
臨床と研究をつなぐ人材を目指して、エビデンスに基づいた情報提供を心掛け、今後は大学院進学を視野に入れて日々学習しています。
元同級生のS田に声をかけられ、一緒にNurswitchに記事を投稿することに。
(S田によると、才色兼備の素敵な同期とのこと)

以前、挿管時や呼吸器管理中の看護について紹介しました。

今回は抜管時の看護について紹介します。

ICUでは挿管よりも抜管に関わることが多く、抜管までの過程、抜管時、抜管後とその一連の流れを理解しておく必要があります。

また、人工呼吸器管理期間が長くなると、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を引き起こし、患者の予後が不良となるということは既に明らかです。そのため、早期に人工呼吸器を離脱するための毎日の評価が重要となります。

抜管まで要する時間

・手術後の場合

覚醒すれば可能です。後に説明する抜管をするための評価を行いません。

・呼吸不全の場合

急性期であれば原因治療後可能ですが、慢性期では時間を要することが多いです。

ウィーニング

呼吸器を離脱するために呼吸器の設定を下げていく過程をウィーニングと呼びます。

まず原因疾患をコントロールし、循環動態を安定化、感染の沈静化、代謝性アシドーシスの改善などを図ります。

そして、呼吸状態(呼吸音、呼吸回数、呼吸パターン、一回換気量、努力呼吸の有無など)や血液ガスの値(pH:7.35~7.45、PaCO2<50mmHg、PaO2>60mmHg、P/F>200など)を評価しつつ、呼吸器のFiO2やPS、PEEP圧などを下げていきます。

人工呼吸器離脱プロトコール

人工呼吸療法を主導する3学会(日本集中治療医学会・日本呼吸療法医学会・日本ク

リティカルケア看護学会)が作成した人工呼吸器離脱プロトコールというものがあります。

pubcome006.pdf (umin.ac.jp)

こちらを参考にすると、抜管までの流れが非常に理解しやすいです。

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial:SAT)

鎮静薬を中止または減量し、患者が自発的に覚醒するかを評価します。

鎮痛薬は中止せず、患者の苦痛を最小限にすることを考慮しつつ実施します。

以下の①➁を満たせばSAT成功となり、次はSBT評価に移行します。

①RASSが-1~0

➁鎮静薬を中止して30分以上過ぎても以下の状態にならない

興奮状態

持続的な不安状態

鎮痛薬を投与しても疼痛コントロール不良

持続する頻呼吸

新たな不整脈の出現

自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial:SBT)

呼吸器の補助がない状態で患者が耐えられるかどうかを評価します。

・方法

30~120分間実施する。

TピースまたはPS≦5~7cmH2Oを継続し評価する

・成功基準

呼吸数30回未満

開始前と比べて明らかな酸素化低下がない

心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血徴候がない

過度の血圧上昇がない

呼吸促拍の徴候(努力呼吸、シーソー呼吸、冷汗、呼吸困難感、不穏状態)を認めない

再挿管リスクの評価

上記のSAT、SBTに成功したら、上気道狭窄や再挿管のリスクを評価した上で抜管を行います。

・リークテスト

カフ圧を抜き、チューブと気管の間に隙間があるかどうかを評価します。

もしリークがない場合、気道浮腫があると考えられます。気道浮腫があると、抜管後の上気道狭窄による再挿管リスクが高まります。喉頭ファイバーで直視する・浮腫軽減目的にステロイド投与・利尿強化などの対応が考えられます。

看護師は、リークテストを行う前に口腔ケアを実施しておき、唾液や痰の垂れ込みによる感染リスクを減らしておきましょう!

・気管内分泌量や咳嗽力の評価

痰が多く喀出できなければ、肺炎が再燃し再挿管となってしまう可能性が高まります。

そのため、気管内分泌物量と咳嗽力の評価を行います。

抜管準備

・経管栄養の投与を中止する

胃内容物貯留の回避するために経管栄養投与を中止します。抜管予定時間を確認し、何時に栄養を止めるか確認しましょう。フルストマックの状態では嘔吐し誤嚥するリスクが高まるためです。

・口腔ケア

抜管時には口腔内の唾液や痰が垂れ込む可能性があります。

口腔ケアや吸引を予め実施しておきましょう。

・再挿管の準備

抜管後再挿管となった場合は一刻を争います。すぐに介助出来るよう準備しておきましょう。挿管の際に必要な物品に関しては、挿管時の看護の記事を参照ください。

挿管チューブは使用中のチューブと同じ太さのものと、1サイズ細いものを準備してください。気道狭窄がある場合、同サイズでは入らない可能性があるからです。

・酸素投与の準備

予め医師にどの酸素投与デバイスを使うか確認しておきましょう。NPPVやNHFを使う場合立ち上げておく必要があります。

抜管介助

1.吸引を実施しておきます

2.医師が用手換気を行います

3.チューブを固定しているテープを外します

4.医師がカフの空気抜き、抜管します

5.口腔内を吸引し酸素投与を開始します

6.排痰しやすいようヘッドアップ等体位調整を行います

7.発声と自己喀痰を促し、呼吸状態の評価を行います

観察

嘔気嘔吐の有無

気道狭窄の有無(奇異・陥没呼吸の有無、頚部の聴診)

喉頭・気管支痙攣の有無(2時間以内)

反回神経麻痺・声帯浮腫(嗄声)、

VS変動

呼吸状態含めた全身状態を観察

何分後に血液ガスをとるか確認しましょう!

抜管合併症

 換気不全(喉頭浮腫、咽頭・喉頭・気管支痙攣、疲労)、感染(嘔吐、垂れ込み)

抜管失敗の基準

・2時間以内に呼吸数>25回/分

・心拍数>140回/分、抜管前から20%以上の変動

・呼吸筋疲労、呼吸仕事量増加を示す所見

・SaO2<90%、PaO2<80mmHg

・PaCO2>45mmHg、抜管前から20%以上増加

・pH<7.33

・吸気喘鳴

まとめ

いかがでしょうか?呼吸器の設定を下げていき、抜管に至るまでには様々な観察・評価項目があります。また、抜管時、抜管後の看護は経験する機会が多いと思いますので、ぜひ参考にしてください。

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参考文献

・3学会合同人工呼吸離脱プロトコール

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