みなさんはクリニカルラダーってご存じですか?
新人育成やキャリア形成を重視している医療機関では、病棟研修や師長面談などでこの用語を聞くことが多いかもしれません。
クリニカルラダーをわかりやすく一言で表すと、「会社が社員を評価するシステムを、看護の業界にに応用したもの」です。
このクリニカルラダー、看護師の皆さんがキャリアを形成してより良い働き方をするために実はとても有効なものです。
この記事はでクリニカルラダーについて聞いたことがない人にもわかりやすく説明していきます!
組織・企業の人事評価で用いられるコンピテンシーモデルとは?
本題のクリニカルラダーのことについて説明する前に、一般的な人事評価のお話をさせてください。
企業が社員の能力を評価する際、一般的には「その社員が企業に利益をどれくらいもたらしているか」が基準となります。
この基準に基づいて会社に多くの利益をもたらす社員のことを「ハイパフォーマー」と呼びます。
このハイパフォーマーの行動特性を一般化して数値などの指標にしたものを、「コンピテンシーモデル」といいます。
(参考:コンピテンシー | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI))
このコンピテンシーモデルの考えでは、ハイパフォーマーが良い結果を残す要因は単に知識や技術だけでなく、特性や価値観も重要であるとされています。
例えば、会社で専門的な知識を持っていても、自分の仕事だけしていて他の人が困っているのに手を差し伸べないような人は、ハイパフォーマーとは呼べなさそうですよね。
逆に、専門的な知識があまりなくても、周りの人に積極的に力を借りてなんとか物事を達成しようとする人は、会社に良い影響を及ぼしそうです。
このように、知識や技術だけではなく、表には見えない特性や価値観が合わさって高い利益が齎されるという考えのもとで、コンピテンシーモデルは作られています。
クリニカルラダーとは?
このコンピテンシーモデルを看護業界で実践しようとしているのが、クリニカルラダーです。
もしコンピテンシーモデルの考えがなかったとしても、多くの組織では売上などの数値目標があるので、ある程度の評価が可能です。
しかし看護の世界では売上などの数値が設定できず成果が見えにくいため、このクリニカルラダーを設定しようという動きがあります。
特に看護実践能力について、日本看護協会が2016年に「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」(以下、JNAラダー)というものを公表しました。
これを個人で自己評価や自己研鑽のために利用したり、病院などの組織が、組織の理念などに合わせて各組織独自のクリニカルラダーを作成して利用したりします。
クリニカルラダーの設定項目は?
では、クリニカルラダーではどのような項目が設定されているのでしょうか?
JNAラダーの内容について
看護の実践能力について、JNAラダーでは
- ニーズをとらえる力
- ケアする力
- 協働する力
- 意思決定を支える力
の4つの力に分類され、それぞれ5段階のレベルで達成すべき目標を設定しています。

この4つの力それぞれを高めるための項目は、以下のように分類されています。

クリニカルラダーについて、少しイメージが湧いたでしょうか。
もしキャリアの中断や転職により、自身の課題を見失っている方は是非JNAラダーや所属している組織のクリニカルラダーを使ってみてください。
クリニカルラダーが設定されている医療機関は、日本看護協会のJNAラダーを軸に作成していることが多いので、クリニカルラダーを自分で意識して実践していれば、もし勤務する病院が代わっても、自身で課題を設定・評価して看護実践能力を高めることが出来ます。
きっとご自身の看護の課題の解決の一助となると思います。
参考文献
1)公益社団法人 日本看護協会「看護師のクリニカルラダー」

2)公益社団法人 日本看護協会「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」
3)公益社団法人 日本看護協会「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」 活用のための手引き
4)公益社団法人 日本看護協会「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」 活用のための手引き3. 学習内容編
5)宗村美江子.看護管理者のコンピテンシー・モデルを使った評価.日本看護評価学会誌.2014
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