【看護師が解説】健康診断の“肝臓の異常”どうする?

看護師

「肝臓の数値が悪いと言われてしまったけど、数値が何を表しているかわからない…」

「具体的にどうなると肝機能の低下なの?」

「肝機能が低下するとどうなってしまうの?」

今回は、看護師の視点から、健康診断での肝臓の検査について、看護師で養護教諭のおみつがわかりやすく解説します。

肝臓の機能、数値についての素朴な疑問を一緒に理解していきましょう!

肝臓の働きについて

それではまず、肝臓の3つの働きについて説明します。

代謝

肝臓は代謝の中心で、栄養素を分解したり、毒性のある物質を分解したりしています。三大栄養素である炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質も肝臓で代謝されます。

糖質はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に脂質は脂肪酸とグリセリンにそれぞれ分解されてはじめて体内に吸収、貯蔵されます。

肝臓が正常にはたらくことで、私たちは栄養を体内に吸収できるのです。

また、解毒機能で有名なものとしては、アンモニアを尿素に変換したり、アルコールを酢酸に変換したりするはたらきがあります。

貯蔵

ブドウ糖を分解したグルコースや中性脂肪、ビタミンA、ビタミンDなど必要な物質を貯蔵しています。

胆汁の生成

消化に必要な胆汁という消化液を生成・分泌する役割も果たしています。

肝機能について、健康診断でわかること

それでは、肝臓の働きの低下は、どんな数値に表れるのでしょうか?肝機能に関する検査項目と働きとの関係を説明します。

GOT(AST)

肝細胞の他にも、腎臓、心臓の筋肉などの細胞内に多く含まれている酵素です。タンパク質を分解し、代謝をスムーズに行うために重要な役割を担っています。

肝細胞や心筋細胞に何かしら障害が起こると血中にGOTが流出し数値が上がります。よって、数値の変化は肝機能障害や心筋梗塞などを見つける手がかりになります。

ただ、GOTは肝臓以外の細胞内にも多く含まれているので、GOTの数値が上昇する要因はさまざまです。例えば、検査前に筋トレをすると筋肉細胞が破壊されて、GOTが血中に流れ出すので、検査でGOTの数値が高くなることがあります。

GPT(ALT)

こちらも代謝を助ける酵素です。肝臓や胆汁が流れる胆道に障害が起こると数値が高くなります。

γ-GTP(γ-GT)

肝臓、腎臓、膵臓、小腸などに含まれている酵素です。アルコールや薬剤を解毒するのに必要な、グルタチオンの働きを助けます。γ-GTPの数値悪化の主な原因は、お酒の飲みすぎや脂肪分の摂りすぎです。アルコールや脂肪分を分解するためにγ-GTPが多く作られるためです。

また、胆石も数値を悪化させる原因になります。胆石で胆道がふさがり、胆汁が流れにくくなるためです。胆石ができる主な原因は、肥満やストレス、不規則な生活習慣です。

ALP

肝臓、胆道、骨、小腸、腎臓などに含まれる酵素で、リン酸化合物(乳製品やレバーに多く含まれる物質)を分解するはたらきがあります。普段は胆汁とともに排出されますが、肝機能障害や胆道の病気で排泄されなくなると数値が高くなります。また、骨や甲状腺に障害が起こっているときも数値が上がります。

総蛋白

血液中の血球成分を取り除いた血清の中に含まれる100種以上の蛋白を総称して総蛋白といいます。肝臓はこれらの蛋白を作っているので、肝機能が低下すると総蛋白量も減少します。また、腎機能が低下した時も数値が下がります。

アルブミン

アルブミンは血清中の蛋白の半分以上を占めているタンパク質です。さまざまな原因で減少するので原因疾患の特定はできませんが、減り具合などから病気の程度が調べられます。一般的には腎機能障害や肝機能障害が疑われます。

総ビリルビン

役割を終えた古い赤血球が破壊された際にできる物質です。通常は胆汁とともに排出されるのですが、肝臓障害や胆道の障害で胆汁が排出されなくなると数値が上がります。血中に増えすぎると黄疸の症状が出てきます。

LDH(血清乳酸脱水素酵素)

LDHは細胞の中で糖をエネルギーに変換するときにはたらく酵素です。全身に存在しますが、肝臓や心臓、骨格筋に多く含まれます。何らかの原因で細胞がダメージを受けると数値が上がります。肝機能障害や心筋梗塞などをみつける手がかりになります。

アミラーゼ

でんぷんを分解する酵素で、膵液、唾液などに含まれます。膵臓に障害があると数値が上がります。

肝機能の項目が異常値になる原因は?

肝機能の数値が悪い=お酒の飲みすぎ、と連想しがちですが、その限りではありません。

肝機能障害を引き起こす疾患と原因は以下の通りです。

肝炎

肝炎ウイルス(A,B,C,D,E型など)が原因となることが多いです。日本では、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎がほとんどです。また、EBウイルスやサイトメガロウイルスなどほかのウイルスや、自己免疫疾患なども原因の一つです。ウイルスに感染する原因はさまざまですが、感染経路は皮膚や粘膜、排泄物なので、性交渉や、排泄物の処理による感染が多いです。

肝炎は劇症化する(症状が激烈で危ない状態になる)こともありますし、放っておくと慢性化し、肝硬変や肝がんに移行することもあります。

脂肪肝

多くの人が想像する、数値悪化の原因です。アルコールの摂取のし過ぎや、過食、肥満、糖尿病、ストレスなど生活習慣に由来することが多いです。

薬剤性肝障害

ほとんどはアレルギー反応に基づく薬物アレルギー性肝障害です。原因がはっきりしている場合が多いので、ほとんどは原因を取り除けば治癒します。

肝臓の再検査をするなら何科に行く?

肝臓・胆嚢・膵臓は隣接し、非常に密接に関係しているので、それらを一緒に見てくれる「肝・胆・膵科」という名前の診療科を受診するか、お近くになければ消化器科を受診するようにしてください。

肝臓に関する詳しい検査は採血のほかに、「腹部CT・MRI検査」「腹部エコー検査」「腹腔鏡による検査」が主ですので、心配な方は受診時に医師に相談しても良いと思います。

肝臓に優しい暮らしをするには

肝機能が低下する原因は様々ですが、脂肪肝などは普段の生活習慣を改善することで予防できます。ここでは肝臓数値の悪化を予防する生活習慣について説明します。

休肝日を設ける

お酒が好きな方も、ご自身の飲酒量と肝機能の低下の程度に応じて、医師と相談し休肝日を設けましょう。この時のポイントは休みを入れるスパンを短くすることです。例えば7日連続で飲酒して1日休むというのではなく、2~3日飲んで1日休むなどの設定にすることで、消化管の細胞や肝臓の細胞の再生ができる時間が長くなります。

適度な有酸素運動をする

お酒を飲まない方でも、過食や肥満により脂肪肝になる可能性があります。そんな方には適度な有酸素運動が有効です。運動によるエネルギー消費で脂肪の分解を促せるだけでなく、筋肉を増強させることで、筋肉によるアンモニア代謝を促し、肝臓の解毒作用を補完できます。

バランスの良いメニューで適切な量の食事をとる

身体で消費しきれなかった分のエネルギーは、脂肪となって体内に蓄積されます。高カロリーな食事、脂肪の多い食事を避け、低カロリーでも満足感を得られるように野菜や豆製品、きのこ類などもしっかり摂取しましょう。

まとめ

肝臓は様々な役割をこなす、本当に大切な代わりの効かない臓器です。

毎年健康診断を受け、生活習慣を見直し、ご自身の肝臓をいたわるようにしてくださいね。

【参考文献】

・医療情報科学研究所.病気がみえるvol.1 消化器 第3版.メディックメディア.平成13年

・全国健康保険協会「肝機能等」

肝機能等 | 健診・保健指導 | 全国健康保険協会

(参照2022/12/22)

こちらもおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました