リフィーディング症候群とは?看護師向けに解説!

ICU

こんにちは、ICUスイッチではICUに関わる看護師に必要な知識や技術について経験をわかりやすく解説しています。

前回はICUにおける栄養管理について説明しました。

まだ見ていない方はそちらもご覧ください。

今回はその栄養管理ととっても関連のある〈リフィーディング症候群〉について説明します。

リフィーディングとは再栄養を意味します。

リフィーディング症候群とは、慢性的な低栄養状態がある患者さんに急激に栄養を投与することによって起こる代謝障害です。

このリフィーディング症候群を引き起こすと心不全や呼吸不全、肝・腎不全などの症状を呈することがあります。

ICUでは、絶飲食管理の患者さんや、まともに食事を取る事の出来ていなかった患者さんが多いため、食事再開の際は、このリフィーディング症候群に関する知識が必要不可欠となります。ぜひ以下の情報を役立ててください。

疫学的解説

リフィーディング症候群の最大のポイントは低リン血症です。

病態は複雑であり、体液量やNa、糖、蛋白、脂肪、チアミン(B1)、K(低K)、Mg(低Mg)にも問題が及んでいます。

発症の頻度は明らかになっていません。

低リン血症のある症例に、リン補充をせず治療を行った場合は本症が100%発症し、リン補充を行った場合の発症率は18%に低下するという報告があります。

低リン血症状は、心不全、不整脈、呼吸不全、痙攣、四肢麻痺などの多彩な症状を引き起こします。

リフィーディング症候群のメカニズム

長期絶飲食期間が続くと、体内は飢餓状態になります。

飢餓状態になると、体内では糖代謝から蛋白質や脂質代謝に変わっています。

この状態で栄養が投与されると、再度糖代謝が促進され、インスリンが大量分泌されます。

インスリンによって細胞内に糖が吸収され、電解質(リン、マグネシウム、カリウムなど)も細胞内に移動するため血中濃度が低下します。

よって飢餓状態で元々不足していたミネラル成分がさらに枯渇することになります。

また、糖からエネルギーであるATPを産生する際にリンが消費されます。

つまり、リフィーディング症候群では、

慢性のリン欠乏 + 追い打ちをかけるようにインスリンサージによるリンの細胞内導入

→細胞内でリン消費が進行

これらの変化が細胞内外でのリンの絶対的枯渇を促進します。このような状況では、血清リン濃度ほんの小さな低下でも多大な細胞機能障害が発生し、生体のほとんどすべての生理システムに重い影響を受けるのです。

リフィーディング症候群に関係する要素

カリウム

カリウムはリンと同じように飢餓状態で枯渇していますが、細胞内からある程度細胞外に動員されて血清濃度はある程度保たれています。

ここにリフィーディングによるインスリン活性が亢進すると、血清カリウム濃度は著明に低下し、不整脈や心停止の原因となります。

マグネシウム

酸化的リン酸化反応など生体の多くの酵素反応の補助因子として重要です。

DNA、RNA、リボソームなどの構成要素としても重要です。リフィーディング症候群ではマグネシウムもリンやカリウム同様に移動し消費されます。これにより心筋障害(不整脈)や神経筋合併症をきたします。

血糖値

飢餓後の急な糖摂取は、インスリン活性を亢進させ糖新生を抑制します。過剰な糖の投与は高血糖をきたすこともありますが、逆に、インスリンの過剰分泌による低血糖発作を来たすこともあります。

この場合、糖を投与すればするほど血糖値が下がるという、パラドキシカルな臨床症状を呈することがあります。低血糖が原因でカテコラミンが過剰放出し、たこつぼ心筋症を来した可能性があるとする研究報告もあるため、循環変動には注意が必要です。

ビタミンB1

ビタミンB1は糖代謝で重要なコエンザイムです。ビタミンB1が枯渇すると、ウェルニッケ症候群(眼性異常、運動失調、錯乱状態、低体温、昏睡)またはコルサコフ症候群(逆行性健忘、作話症)などが発症します。

急な炭水化物の投与はインスリンの分泌を亢進させ、インスリンは、腎におけるNaや水の分泌を抑制します。

よって、尿量は低下し、体液の過剰を引き起こします。尿量を指標に通常の輸液調節を行った場合、過剰輸液に気付かないことがあります。これにより心不全や肺水腫をきたすことがあります。

       

※中屋裕(2021),リフィーディング症候群より引用

リフィーディング症候群の予防・治療

予防・治療のためには、栄養投与を開始前後のリン、Na、カリウム、マグネシウム、糖の厳重モニタリングが重要です。

ガイドラインによると次のような流れが示されています。

ハイリスク患者の選定

下記基準が1つ以上下記基準が2つ以上
・BMIが16未満
・15%以上の意図しな体重減少(過去3~6か月間)
・10日間の絶飲食
・再摂取前の低K血症、低P血症、低Mg血症
・BMIが18.5未満
・過去3~6か月で10%以上の意図しない体重減少
・5日間以上の絶飲食
・アルコール依存症の既往
・次の薬剤の使用歴:インスリン、化学療法、制酸薬、利尿薬

ハイリスク患者では、最大でも10kcal/kg/24時間の栄養投与から始め漸増させていく対応をとります。4~7日かければ予定の全投与量が達成できます。P、Mgは栄養で入るため、B1は別で入れていきます。

非常に栄養状態が不良な患者(BMI<14あるいは2週間以上の飢餓状態)の場合、最大でも 5kcal/kg/24時間の栄養投与で開始し、循環モニタリングも密に行います。栄養投与時は血流が腸管に集中するために血圧低下を認めることがあり、要注意です。

栄養を開始する前に電解質を整える必要はなく、栄養投与と同時に調整を開始すればよいです。これは前回のガイドラインからの変更点です。栄養投与をさらに遅らせることが無いように、このように改定されました。

このように、リフィーディング症候群の治療には、患者さんの栄養状態に合わせた栄養の補填が必須の対応となっています。

栄養投与の開始前には、開始後のリン、Na、カリウム、マグネシウム、糖の厳重モニタリングが必要です。

まとめ

いかがでしたか?毎日採血データ推移のモニタリングを行う中で、ぜひリンやマグネシウムなどの電解質推移も確認してみてください。リフィーディング症候群を起こしてしまうと致死的であるため、日ごろからリンの補充を行うことが重要です。栄養管理の記事と合わせて、ぜひご覧ください!

※本記事は様々な参考書、勉強会資料、看護師向けサイトより私が情報をまとめたものです。そのため、あくまで参考程度にご覧ください。誤情報がある場合はコメント頂けると幸いです。

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参考・引用文献

3.静脈栄養の合併症と対策 | Part4 静脈栄養 | ナースが知っておきたい 栄養の基本と栄養サポートの進め方 | アルメディアWEB (almediaweb.jp)

リフィーディング症候群|“コレ何だっけ?”な医療コトバ | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)

リフィーディング症候群(四国医誌68巻,1‐2号23~28,4月号,25,2012

ICU3年目ナースのノート

こちらは前回の記事で紹介した参考書です。

ぜひおすすめ参考書の記事もご覧ください。

namiさん
namiさん

京都大学卒業後、とある大学病院のICUでコロナに追われて奮闘中。
臨床と研究をつなぐ人材を目指して、エビデンスに基づいた情報提供を心掛け、今後は大学院進学を視野に入れて日々学習しています。
元同級生のS田に声をかけられ、一緒にNurswitchに記事を投稿することに。
(S田によると、才色兼備の素敵な同期とのこと)

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