こんにちは、今回はヴィクトール・エミール・フランクルの『夜と霧』を読んだので、ゆるっとレビューしていきます。
ちなみに関連書籍についてのレビューもしているので、是非そちらの記事も併せて見てみてください!
それではいきましょう!
『夜と霧』ってどんな本?
まず『夜と霧』がどんな本か、あらすじを紹介します。
この本は、ヒトラーが猛威を振るっていたユダヤ迫害の際に収容所に連行され、奇跡的に生還した精神科医のフランクルが書いたもので、収容所で起きていた事実と、そこでの収容者や自身の精神状態を鮮明に描写した書籍です。
なので、かなり悲惨で残酷な表現があり、読んでいて心が痛むことが多いです。人の死や人肉食についてもかなり配慮してオブラートに包まれていますが、当時の残虐な状況が綴られているので胸が苦しくなるような場面も含まれていました。
しかし、新婚の妻と引き離されて、多くの死を目の当たりにして、自分の未来も見失いかけたフランクルが生きるために奮闘した現実と工夫が記されているため、多くの人に希望を与える書籍でもあります。
導入の章の「一一九一〇四の報告ー心理学的試み」で、この書籍の位置づけが以下のように書かれています。
このような心理学的探求のほんとうの危険は、それが個人的な調子をおびることではなく、かたよった色合いをおびることにあるからだ。そこで、わたしがここに書いたことを今一度、こんどは没個人的なものにまで蒸留し、ここにわたしが差し出す経験の主観的な抄録を客観的な理論へと結晶させることは、安んじてほかの人びとの手にゆだねようと思う。
(引用:『夜と霧』)
つまり、フランクルはこの書籍で自身の理論を完成させようとしたのではなく、「解析や解釈の素材」として他者に提供する意図で記していたのです。
読み手によって捉え方や解釈がそれぞれ異なるように書かれたことが、この本が多くの人に愛されてきた理由なのかと思います。
『夜と霧』のなかみ
『夜と霧』の構成はおおまかにまとめると以下のようになっています。

また、各章のトピックごとに小見出しがつけられており、文章全体が短編集のような構成になっています。同じ場面の出来事について着眼点を変えて小見出しを分けていることもあれば、一つの小見出しにいくつかの場面が含まれていることもあり、より鮮明な記憶を執筆するための粗削りなスピード感が見てとれます。
前半部分は起きていた事実や行動についての記述が多く、心理変化はその事実に付随して描かれていたように思います。
対して、後半になるにつれて精神的なテーマについての表現に合わせて、出来事を引用しているような書体になり、心理的な内容が中心になっていった感じがしました。
読んでみた感想
正直なところ、かなり重たかったです。
僕は普段から本を読む方ではありますが、この本については休み休みで1週間ほどかけてゆっくりじっくりと読みました。
手記の文体で、一人称でありながら出来る限り叙事的に記されているため、文面で見ても難解な表現がところどころあります。また、現代の日本社会と比較すると非日常的であるため場面の描写に対しての想像が容易に行いにくいことも読むのに時間がかかった理由の一つです。
全体として“難しくて、考えさせられる、でも興味深い本”という印象を受けました。
そして、時間をおいてまた読み返し、自分なりにもう一段階理解を深めたいと感じた一冊でした。
S田的に特に心に残ったポイント
この本はかなりインパクトのある表現が多かったので厳選して紹介するのはとても難しいですが、僕が良い意味で本当に心打たれた場面を1つ紹介します。
第2章の「遺言の暗記」という段落で、死を覚悟したフランクルが友人に自分の遺言を伝える場面があり、そこで3つ目に残した遺言です。
精神科の医師として実績を積み重ねていたフランクルが、結婚のすぐ後に妻とともに収容所に連行され、愛する妻と離れてしまった中で多くの悲惨な事実を突きつけられ、少しのパンと水のようなスープで重労働をさせられ、いよいよ殺されるかもしれない状況になります。
そんな絶望的な状況に腹をくくって放った最後の言葉。その言葉とは…
是非、みなさんの目で確かめてください。
ここまで言って、まさかの引用なしです(笑)。ただ、この言葉は『夜と霧』を最初から読んできたからこそ、特別に心を動かされる表現だと思いますので、あえて紹介しませんでした。
僕はこのフランクルの人間性に、本当に目頭が熱くなりました。
まとめ
いかがでしたか?
世界中で愛される名作の『夜と霧』の概要について紹介させていただきました。
解説書を読んで内容をおおよそ把握していましたが、本書を読むことでしか感じられない重さがあるので、この本は是非実際に時間をかけてみなさん自身で読んでみることをおすすめします。
それではまた!
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