医療用アセトアミノフェンに追記された重大副作用「薬剤性過敏症症候群」って??

看護師

“痛み止め”のお薬としてロキソニンに並んでメジャーなカロナールについて、最近新たなニュースがあったので、今回はそれを紹介していきます。

新型コロナウイルスの流行で大活躍し、有名になった解熱鎮痛薬「カロナール」の一般名は「アセトアミノフェン」といいます。

薬には製品名と一般名という2つの名前があります。そこでここから先は、一般名であるアセトアミノフェンとして書いていきます。

そんなアセトアミノフェンについて、1/17に厚生労働省から、添付文書に重大な副作用として、

「薬剤性過敏症症候群」を追記するように製造販売会社に指示する内容の通知が出ました。

今回は「薬剤性過敏症症候群」ってなんだろう?について解説していきます。

アセトアミノフェンとは?

アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として1893年から医薬品として用いられている、歴史の長い薬です。市販薬としてバファリン、タイレノールなど様々な名前で販売されています。

アセトアミノフェンの効果は大きく3つあり、

下記の疾患並びに症状の鎮痛頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症
下記疾患の解熱・鎮痛急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
小児科領域における解熱・鎮痛
(引用元:アセトアミノフェン200mg「タカタ」添付文書)

主な役割としては、解熱剤と鎮痛剤という働きがあります。

新型コロナウイルスの流行では解熱剤として幅広く使用されてきました。

その他の特徴として、

  • 眠くなる成分が入っていない。
  • 腎機能、消化管、心血管系に対する影響は少ないが、肝機能障害に注意が必要。
  • 一般的に小児や妊婦、高齢者にも比較的安全に使用されている。
  • 経口で投与する以外に、医療機関ではアセリオという静脈から投与する(点滴)タイプも使用されている。

ということが挙げられます。

薬剤性過敏症症候群とは?

薬剤性過敏症症候群は、医薬品などが原因で生じたアレルギー反応をきっかけに、薬疹と感染症が複合して起こると考えられています。

症状は、

  • 重度の薬疹(全身に赤い斑点)
  • 高熱(38℃以上)
  • のどの痛み
  • 全身がだるい
  • 全身のリンパ節が腫れる
  • 肝機能障害

などです。

通常のアレルギー反応による薬疹は医薬品の投与後すぐに発症しますが、薬剤性過敏症症候群は投与後2週間以上経ってから発症することが多いです。

また原因となる医薬品を中止した後も何週間も続き、軽快するまで1ヶ月以上かかることがあります。中には1年以上たって発症することもあるそうです。

また、ほとんどの例においてヒト6型ヘルペスウイルス(HHV-6)の再活性化が認められることが明らかになっています。このウイルスは赤ちゃんがかかる突発性発疹の原因ウイルスで、殆どが乳幼児期に感染してそのまま潜伏します。

薬剤性過敏症症候群は、薬を投与しているうちに、このウイルスの再活性化状態が起こったと考えられています。

さらに6型ヘルペスだけでなく、サイトメガロウイルスやEBウイルスなど様々なヘルペス科のウイルスが、次々と再活性化し、いろいろな臓器に炎症を起こしてくることもあります。

そのため、原因となる医薬品を中止しても、ほとんどの例で放っておくと悪化し、様々な症状をおこすことがあるとても厄介な症状です。

薬剤性過敏症症候群が起こる頻度としては、医薬品を使用している人のうち、1000~1万人に1人ぐらいと考えられています。

治療については、重症な薬疹の治療と同じで、ステロイドの内服となっています。

ステロイドは炎症を抑える効果が高く、非常に優秀な薬ですが、投薬の量やタイミングが難しく、分量を間違えると副作用が大きいため、必ず病院を受診し、医師の指示に従うようにしましょう。

なぜ今回表示が追加されたか?

今回のニュースは、コロナが流行ってカロナールなどのアセトアミノフェン製剤の投与機会が増えたことに起因すると考えられています。症例がたくさん集まったことによって有意差が明らかになった副作用といえます。

症状自体も重く、想像しただけでもかなりしんどいことがわかりますよね。しかし、誰でも持っているウイルスと薬のアレルギー反応などの原因が絶妙に重なり合って運悪く発症してしまうということのようなので、誰もがこの副作用を起こしてしまう可能性があります。

まずは発疹や発熱など、おかしいと思ったら必ず病院に行くようにしてください。治療法はあるので必要以上に恐れなくてもいいと思いますので、こういうのもあるんだ、と心に留めておいてください。

【参考文献】

照林社「病棟でよく使われるくすり」愛媛大学医学部附属病院薬剤部

医療用医薬品:アセトアミノフェン

医療用医薬品添付文書

厚生労働省,患者の皆様へ 薬剤性過敏症症候群

https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1a10.pdf

薬剤性過敏症症候群とはどういう病気ですか?

薬疹(重症) Q3 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

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